2017.11.30 2023.10.05
10回目の節目となる全国学力・学習状況調査の結果から見えてきたことは?
2007年度に始まった全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)も、今年度で10回目を迎えました。日本の教育の改善のため、必要な調査を行うために開始されたもので、小学6年生と中学3年生を対象に、原則全員参加で行われます。2017年度は国語、算数・数学の学力試験とともに、などを尋ねるアンケート「質問紙調査」も行われ、先頃その結果が発表されました。ここでは学力テストの内容や結果分析、今後の課題について考えてみましょう。
個人の学力を問うテストとは異なり、問題別正答率などのデータから、学力傾向の把握が目的
一般にテストと言えば、個々の実力を測る目的で行われるものですが、全国学力テストは学校現場の指導方針や指導方法に活かすため、子どもたち全体の学力を調査・把握しようとするものです。テストの問題・解答は公表され、個別の成績結果も本人に示されますが、いわゆる模擬試験のように個別の学力を競うものではないので、その結果に一喜一憂する必要はありません。
2017年4月に行われた学力テストは国語と算数・数学の2教科で、それぞれ主として「知識」を問うA問題と、主として知識・技能等を「活用」する力を問うB問題の2種類。また「質問紙調査」には、児童・生徒を対象に学習習慣や生活習慣を尋ねるものと、学校を対象に指導方法などを問うものがありました。
そのテスト結果のデータを先頃、国立教育政策研究所がまとめ、分析して発表しました。たとえば正答率を地域ごとに分類して過去のデータと比較してみると、下位グループとされていた地域の底上げが進み、学力の地域格差が少しずつ縮まってきたことがわかります。ただし、全体的な正答率に大きな変化はないので、残念ながら子どもたちみんなの学力が向上しているとは言えないのが現状です。
また問題別、設問別の正答率を分析することで、現状の理解度や苦手な分野傾向などを知ることができますが、A問題と比べてB問題の正答率が低いという結果に。つまり応用力が弱いという傾向で、これはテスト開始当初から改善していません。このほか質問紙調査では、今回中学生の部活動の参加状況についての項目が加わりました。正答率との関連が注目されていますが、引き続き今後の調査をみて考えたいところです。
全国学力テストは毎年小学6年生と中学3年生を対象に実施されますが、個人の学力を評価するものではありません。
教科のテスト(国語、算数・数学)の他に、質問紙調査(アンケート)が実施されます。
学力の地域格差は解消傾向にありますが、学力の内容を分析すると、応用力に課題が残ることがわかりました。
テスト結果を今後にどう活かすか。 成果を上げている地域の取り組みを参考に
今後の課題とされるのは、国語、算数・数学ともに応用力のアップです。たとえば小学校国語では、「ことわざの意味や漢字についての理解度は高いが、目的や意図に応じた適切な言葉づかいや自分の考えをまとめることは苦手という傾向がある」といった結果が出ています。言葉をもっと自由に使いこなせるような力をつけていく必要があるということです。ところで全国学力テストで上位を占めている地域の教育現場では、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
首都圏など大都市では、学習塾に通って勉強する子どもたちも少なくありませんが、やはり基本となるのは学校です。たとえば秋田県では、子どもが伸び伸びと学習できるような環境を整える一方で、子どもたちが自ら問いを発して探求する授業を広く行っており、こうした取り組みが、結果を上位に押し上げているのだと思われます。もちろん各地域・学校とも、子どもたちの学力を伸ばすためにさまざまな試みを行っていますが、成果を上げている地域の取り組みを参考に現場のガイドラインをつくり、さらなる改善を積み上げていく必要があるでしょう。
これからの日本・世界で求められている学力は、単なる暗記の知識ではなく、何かに直面したときに総合的に活用できる、真の実力です。自ら学ぶアクティブ・ラーニングにより、教科内容に興味を持ち、知識・理解を深めていくことが望ましいといえます。家庭においても、子どもたちがいろいろなことに興味を持ち、自ら調べて深めていけるよう、応援したいものです。
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明光2020教育改革室
岡田直将
子どもたちの知識の定着を確認しさらに成長を促す材料として活用
「地域間の学力格差を縮めることを狙いに」という趣旨で始まった、全国学力テストが、実施から10年が経ちました。本文でも紹介している秋田県の事例のように、各地域では調査内容を学習指導に生かしています。今後は、教育改革により、「学力=テストの点数」と言い切れない時代になります。ただ覚えることではなく、知識を活用し、自分で考え、判断し、表現する力が大事になります。学力テストの結果は将来を懸念する材料ではなく、子どもたちの知識の定着を確認しさらに成長を促す材料として活用していきたいですね。
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