2022.02.24
VUCA時代とはどんな状況?VUCA時代を生き延びるための教育とは

現代社会の状況を示した「VUCA時代」とは、どのような意味かご存じでしょうか。VUCAは近年、教育の新キーワードとしても注目を集めています。
お子さまの教育や将来に、VUCA時代がどう影響するのか気になる保護者もいるでしょう。本記事では、VUCAの意味や教育への関わり、またVUCA時代に求められる人材などについて分かりやすく解説します。
教育の新キーワード「VUCA」とは?
教育の新キーワードの1つとして意識されるようになった「VUCA(ブーカ)」は、4つの単語の頭文字を合わせて作られた言葉で、近年においては現代社会の状況を表す意味でも用いられます。まずは、VUCAとは何かを解説します。
VUCAとは何か
VCUAとは、あらゆる事柄において未来を見通しにくくなった現代社会の状況のことで、ビジネスや教育の現場でも広く用いられつつあります。
もともとVUCAは、アメリカで「不透明な戦略」を表す軍事用語として使われていた言葉です。それが、働く環境や就業形態がどのように変化していくか分からない現代の状況をうまく示す言葉として、ビジネスでも利用されるようになりました。
さらに、VUCAという言葉の認知度が上がるに従い、教育の現場においても意識されるようになっています。今の子どもたちがこれからの不透明な時代を生き抜くために求められる能力は多岐にわたり、それらを身に付けさせる必要があるとして、多くの教育現場で子どもたちの「思考力」や「問題解決力」を養う学習が取り入れられています。
V・U・C・Aそれぞれが意味するもの
VUCAの文字がそれぞれ何を意味するのか、例を挙げて解説します。
・Volatility(変動性)
Volatility(変動性)とは、社会の価値観や仕組みの変動が激しい状態のことを意味します。スマホやSNSなど新サービスが次々と生まれる社会では、営業方法やマーケティングの変化にも柔軟に対応し、新しいものを常に活かして戦略を立てることが求められるでしょう。
今の子どもたちには、変動する世の中を柔軟な思考で受け入れ、うまく適応する力を身に付けることが求められています。
・Uncertainty(不確実性)
Uncertainty(不確実性)とは、予測を立てることが難しく、不確実な事柄が多い状況のことを意味します。たとえば、気象変動による環境の変化や新たな感染症の蔓延を見通すことは困難です。
また近年は、企業における副業が解禁されたり、少子高齢化に伴って働き方や雇用制度が変化したりと、従来の仕事のあり方そのものが転換期を迎えています。子どもたちは確実な未来を予想しにくいなかで将来について考え、夢を見つけなければなりません。
・Complexity(複雑性)
Complexity(複雑性)とは、さまざまな要素が複雑に絡み合い、社会状況を把握しにくい状態のことを意味します。テクノロジーの進歩により多種多様なサービスやシステムが誕生している一方、ビジネスの仕組みは複雑さを増し、単純な方法で解決することは困難です。
またグローバル化が進むことによってビジネスは拡大しましたが、同時に国ごとの文化や法律などの違いにより、日本で成功したビジネスが海外では通用しないなど、これまでにない問題も発生しています。
こうした複雑な社会を生き抜いていくために、子どもたちはさまざまな角度から物事を考え、自分で解決していく力を身に付けなければなりません。
・Ambiguity(曖昧性)
Ambiguity(曖昧性)とは、因果関係が不明で、はっきりとした正解が存在しない状況が生まれることを意味します。変動の激しい現代では、過去の実績や経験が通用せず、前例のない問題を抱えることが増えています。
解決策が曖昧なままの状態が続けば、経済は複雑さを増し、社会の安定性が損なわれます。近い将来の予測すら見通すのが難しくなっていくでしょう。子どもたちは前例のない問題に直面したときに、新たな道を切り開いていく力を養う必要があります。
VUCA時代とはどのような時代か
変動が激しく、予想不可能で複雑な問題を抱えるVUCA時代とはどのような時代なのでしょうか。ここからは、VUCA時代の象徴的な出来事や、この先どのように変化する可能性があるのかを解説します。
崩壊した終身雇用
経済状況の悪化や日本人労働者の減少によって終身雇用制度は崩壊を迎えつつあります。また、平均寿命100年の時代が間近に迫っていることも、雇用形態の流動性に拍車を掛けています。
従来は、高校や大学などの教育機関の卒業後は企業に就職し、そのまま定年まで勤める「教育・仕事・引退」の3ステージの人生モデルでした。しかし今後は、教育から会社勤め、組織にとらわれない働き方に加え、転職や学び直し、起業などさまざまな方面で人生を切り開いていく「マルチステージの人生」へと変化します。
文部科学省も前提にしつつあるマルチステージの人生は、一人ひとりが理想の人生を追い求め、それぞれの働き方を選択する生き方です。少子高齢化が進む日本では、マルチステージの人生に向けて働き方を大きく変えていく必要があるでしょう。
今ある職業の半分は10年後にはもうない?
AIの発展や国際分業などにより、現在ある職業の半分が10年後にはなくなると予測されています。主に企画の立ち上げや人との関わりを必要とする仕事などは残りますが、多くの仕事に必要なスキルはいずれコンピューターがより効率化して担うことになるでしょう。
そうした世の中で、今の子どもたちの大半は現在の社会に存在しない職業に就く可能性が高いといわれています。既存の職業に就くことをゴールとするだけでなく、変化に対応できる柔軟な進路設計が必要です。
SDGsへと大きく舵を切る世界
近年、SDGsが指導要領にまで記載され、全世界的な目標として大きくクローズアップされています。VUCA時代は地球環境や資源、格差の問題を放置したまま、無軌道に成長を目指していける世界ではありません。
世界・人類が向かう先が予測不可能な変化を迎えているなか、持続可能な社会を目指すSDGsへの取り組みは重要さを増しています。教育を通して持続可能な社会の担い手を育成することは、SDGs達成の鍵となるでしょう。
コロナ禍が垣間見せたVUCAの一端
コロナ禍の影響により世界中の社会が大きく変容したことは、VUCA時代における予測不可能な状況の一端といえます。想定外の出来事で、社会のあり方が簡単に大きく変わってしまうことが改めて示されたのではないでしょうか。
コロナ禍は一時的な影響にとどまらず、ニューノーマル(新しい日常)な社会のあり方を広げています。ニューノーマル社会がコロナ禍以前の状態には戻らないことからも分かるように、子どもたちは新しい物事や変化そのものに適応する能力が求められるでしょう。
VUCA時代に求められる教育と人材

VUCA時代を担う子どもたちには、変化に対応し、持続可能な社会を実現できる能力が求められます。しかしそれらの能力は、従来の受け身の教育だけで身に付けることはできません。ここからは、VUCA時代に求められる教育と人材について解説します。
柔軟で自律的な思考力
これまでの常識が通用しないVUCA時代を生き抜くためには、柔軟で自律的な思考力が必要です。テクノロジーは日々進歩し、医師や弁護士のような職業ですらAIに置き換えられることも考えられます。
AIとの共存生活に対応できるよう、疑問に対して自ら考える力を育てる教育が大切です。VUCA時代には物事の本質を見極める力や、自ら課題を設定し解決できる力を持つ人材が求められるでしょう。
新しい知識の吸収力
新しいテクノロジーの誕生や発展は、VUCA状況を作り出す要因の1つです。企業が存続するうえでは、破壊的イノベーション(これまでのルールをくつがえすような技術革新)が危機を救うチャンスになります。
革新をもたらすためには、新しい知識を幅広く吸収する力が必要です。ICT教育を足掛かりとし、テクノロジーを理解し活用していけるような人材が求められています。
あらゆる状況への対応力
VUCA時代では、あらゆる状況へ臨機応変に対応できる力が必要です。職業や人生設計も不確実で予測できない社会では、「どこでも通用する」人間的能力が欠かせません。
変動する社会では、自分の立場が流動化したときに果断に決断し、新しい道を切り開いていける人材が求められます。
VUCA時代と入試
VUCA時代における教育についてお伝えしましたが、これらの教育と入試にはどのような関わりがあるのでしょうか。入試で重視されるポイントや出題傾向の変化、受験勉強をするうえでお子さまが目指すべき姿について解説します。
情報・統計教育の重視
2025年以降の共通テストには「情報」科目が追加されます。各科目での統計活用をはじめ入試へも影響することから、情報・統計教育が重視されているのです。
入試では全科目を通して、資料・グラフ・地図・写真・文章などの読み取る資料の量が増加し、知識や解法の暗記のみで解答できる問題は減っています。そのため制限時間内で問題から情報を読み取り、自分なりに考察して答えられる力が必要です。
また、VUCA時代では「AIやデータを最大限活用できる人材」も求められます。教育ではプログラミングや統計教育が導入され、今後ますます重視されるスキルとなるでしょう。
知識量から思考力・判断力・表現力への転換
大学入試では「思考力・判断力・表現力」を評価する出題方法への転換が進んでいます。暗記のみで答える問題は少なくなり、知識を実践的に活用して解答できる力が求められるようになります。
指示されたことをやる、与えられたことを覚える人材ではなく、自分で考え問題を解決できる人材育成が重要です。
自分の力で選び・学べるお子さまへ
VUCA時代では、主体的に学び、考え、選択できる人材が入試でも社会でも求められます。従来のような詰め込み学習では、自ら問題を探求し解決する力は伸びません。知識を基に課題を見つけ、解決方法を思考する力がなければ、いずれ入試にも対応できなくなるでしょう。
「よい学校へ行けば一生安泰な時代」が終わったことを踏まえ、変化のなかから自分の力で選び、学べるお子さまへと育てていくことが大切です。
個別指導の明光では、受験ノウハウだけでなく「自ら学ぶ力」「カウンセリングを通した自分での目標設定」を重視し、お子さまの問題解決能力を育みます。個別指導による自立学習を通じて、創造力豊かで自立心に富んだ21世紀社会の人材育成をサポートさせていただきます。
まとめ
VUCA時代とは、変動が激しく不確実な未来や、予測できないような複雑な問題、解決策が曖昧で正解が1つとは限らない状況など、目まぐるしくかたちを変える現代社会を示した言葉です。
AIとの共存生活に向けて、子どもたちには問題を解決する力や知識を吸収・活用する力、臨機応変に対応する力が求められます。お子さまがVUCA時代に適応するためにも、情報を理解し読み取る教育や、問題を思考し解決できる力を身に付けることが重要です。
明光では生徒一人ひとりに合わせたオーダーメイドのカリキュラムで進行する授業や、丁寧なカウンセリングを通じて、お子さまが自ら学ぶ力を育てます。お子さまの学習方法や進路などでお悩みの際は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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