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2021.03.22      2024.02.01

「高校無償化」について制度の仕組みや手続きの流れを解説

「高校無償化」について制度の仕組みや手続きの流れを解説

近年話題になっている「高校無償化」の制度は、高校入学を控えるお子さまをお持ちの皆さまにはチェックしていただきたい制度です。所得制限などの受給資格の条件や、いくら支援を受けられるのかなど、気になるポイントは多いでしょう。

そこで今回は、高校無償化の制度を利用するために知っておきたい受給資格や受給額、申請手続きの方法などを紹介します。

そもそも「高校無償化」とは?

高校無償化制度の正式名称は、「高等学校等就学支援金制度」です。2010年に開始した国の制度で、受給資格を持つ生徒には国から支援金が出るため、高校の学費が実質無償になります。また、都道府県など各自治体でも授業料を無償化にする制度があります。

高校無償化は、公立高校・私立高校のどちらに通う生徒でも対象となります。全日制、定時制、通信制も問われません。

また中等学校の後期課程、特別支援学校、高等専門学校などについても、受給資格を満たせば授業料が実質無料になります。

高校無償化の内容

受給資格

高校無償化には所得制限や受給資格があり、受給資格を満たすためには日本に住所があることが必須です。

保護者の所得が高等学校等就学支援金制度の受給資格を満たすかどうかは、以下の計算式に当てはめることで判別することができます。

両親2人分の市町村税の課税標準額×6%ー市町村民税の調整控除額

計算結果が30万4,200円未満となる場合は、基準額(11万8,800円)の受給が可能となります。計算結果が15万4,500円未満となる場合は、私立学校授業料の実質無償化の対象となります。

ご自身の課税標準額などはマイナポータルから確認することができます。共働きの場合も含め世帯年収によるモデルケースを以下の表で紹介しているのでぜひご確認ください。
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国公立高校の場合

公立高校の授業料は、全日制の場合は年間で11万8,800円(月額9,900円)、国立高校の場合は11万5,200円(月額9,600円)です。定時制かつ単位制の公立高校は1単位あたり年間1,740円です。基準額はこの国公立高校の授業料である11万8,800円を支給し、国公立高校を無償化するシステムです。

例えば、年収に換算すると、両親のうち片方が働いていてお子さまが1人いる場合、世帯年収が約910万円未満の世帯は基準額(年間11万8,800円)を受給できます。共働きの世帯の場合は、世帯年収が約1030万円未満の場合、基準額(年間11万8,800円)を受給できます。

私立高校の場合

全日制の高校に通う場合の支援金の限度額は年間39万6,000円です。 通信制の私立高校に通う場合は、年間29万7,000円まで支給されます。

支給額は世帯の年収によって所得制限があります。例えば、両親のうち一方が働いていて、お子さまが1人の場合、世帯の年収が590万円未満であれば限度額(年間39万6,000円)まで支給され、実質無償化の対象になります。

また、両親のうち一方が働いていて、世帯の年収が590万円以上910万円未満でお子さまが1人の世帯は、基準額(年間11万8,800円)を受給できます。そのため、世帯年収590万円以上910万円未満の世帯のお子さまが私立高校に通う場合は、差額を負担する必要があります。

通信制高校などの単位制の学校についても同様です。年収が590万円未満の場合、単位制を採用している通信制高校では1単位あたり1万2,030円まで支給されますが、年収が590万円以上910万円未満の場合は1単位あたり4,812円までの支給となるため、差額を負担することになります。

東京と大阪ではどの世帯でも私立高校の授業料が無償化!

国の高等学校等就学支援金制度だけでなく、東京都と大阪府でも今までは年収910万円未満の世帯を私立高校授業料無償化の対象としてきましたが、東京都は2024年度から所得制限を撤廃、大阪府は段階的に所得制限を撤廃し、すべての世帯で私立高校授業料の無償化を受けることが可能となります。

東京都の私立高校授業料無償化

東京都では都内私立高校の平均授業料47万5,000円までの助成を受けることができるようになります。

年収910万円未満の世帯は国の就学支援金に加えて、授業料が47万5,000円以内であれば、その全額が助成されます。一方、年収910万円以上の世帯でも、47万5,000円までの授業料ならば全額助成が受けられます。

大阪府の私立高校授業料無償化

正式決定は大阪府議会の令和6年2月定例会を経てですが、大阪府は2024年度の高校3年生から段階的に制度を適用し、2026年度に全学年で授業料を完全無償化する見込みです。授業料の支援に対し、東京は47万5,000円までという基準を設けているのに対し、大阪は基準がありません。授業料に関しては完全に無償化されます。

また、基本的には府内の私立高校に通う子どもがいる世帯に対しての支給となりますが一部、府内から府外に通学している子どもがいる世帯にも適応される場合があります。

詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
大阪府の高等学校等の授業料無償化制度について

高校無償化制度はいつ申し込めばよい?手続きの流れを解説

ここからは、高校無償化制度で支援金を受け取るための手続き方法や、申し込みから受け取りまでの流れを詳しく解説します。

高校入学後に申請を行うのが基本

高等学校等就学支援金制度で支援を受けるには、原則として高校入学後に申請手続きを行う必要があります。所得要件を満たしていれば、自動的に支援を受けられるわけではないので注意しましょう。手続き方法については学校から案内が来るため、案内に従って申請を行います。

また、地域によっては都道府県などの自治体が実施する就学支援制度を利用できる場合もあります。国の制度とは別なので別途申請する必要がありますが、高等学校等就学支援金制度と同様に案内をよく確認しておきましょう。

申請に必要なもの

高校無償化制度で支援を申請する際には、以下の書類が必要です。

・申請書類
・保護者のマイナンバーがわかる書類

保護者のマイナンバーがわかる書類は、マイナンバーカードの写しもしくはマイナンバー通知カードの写し、マイナンバーが記載された住民票の写しなどです。

なお、親権者全員分のマイナンバーが確認されるため、親権者が両親の場合は両親2名分の書類が必要になります。

申請の際、都道府県によっては別の書類も必要になる場合があります。地域や学校を問わず必要になる書類は上記の2点ですが、別途必要になる書類があるかどうか、学校からの案内をよく確認するようにしましょう。

在校生で新たに申請を行う場合

高校無償化の制度は、現在高校に在校している場合にも申請が可能です。家庭の収入についての書類を届け出る時期は7月頃と定められており、申請の時期が近づくと学校から案内される仕組みになっています。学校から案内が届いたら、案内に従って申請しましょう。

申請はオンラインでも可能

2020年4月の改正前までは、高校無償化制度の申請は学校に必要書類を提出するかたちで行われていました。しかし、現在はオンラインでも申請が行えるようになっています。

オンラインで高校無償化制度の利用を申請する際は、学校から通知されるIDとパスワードを利用し、専用サイト「e-Shien」で案内に従って行います。

「高校無償化」を申請する際の注意点

高校無償化の制度を利用する際には、いくつか注意すべき点があります。家庭の収入に応じた上限額の支援金を受け取れるように、申請前に以下の注意点を把握しておきましょう。

所得の基準や計算方法は都道府県ごとに異なる

高校無償化制度における所得基準や計算方法は、都道府県や学校によって異なります。申請の際の必要書類の提出期限についても地域によって異なる場合があり、必ずしも期限が同じとは限りません。

受給資格を満たす所得要件の判定においては、家族構成や生計維持者が誰にあたるかなど、さまざまな条件が定められています。そのため高等学校等就学支援金の支給額は、家庭によって大きく変わるのが特徴です。

目安は一般的な目安として把握したうえで、実際の支給額はいくらになるのかは必ず確認するようにしましょう。

入学前に支払う授業料は一旦自己負担する必要がある

高等学校等就学支援金制度の支援を受ける際は、受給資格を満たす場合でも、一旦授業料を自己負担する必要があります。

高校無償化制度では、受給資格を満たしていれば自動的に授業料が免除されるわけではなく、高校入学後に支援の手続きを行う必要があります。手続きは、基本的に入学した高校を通して行うことになります。

つまり高校入学後に手続きを行い、申請が通るまでは、支援を受けられることが確定していない状態ということです。よって、入学前に支払う授業料については一旦自己負担する必要があります。

支援金は、申請が受理された後、学校に支払われるため、自己負担した授業料が返金されるのはその後になります。返金時期の目安は、7月以降です。

受給条件を満たす場合でも、一旦授業料を自己負担する必要があることを覚えておきましょう。

高校無償化制度を利用しても、すべて無料ではない!

高校無償化の制度を利用して授業料が実質無償になったとしても、授業料以外の費用はかかります。したがって授業料が無償になっても、ある程度の学費の蓄えは必要です。
高等学校等就学支援金制度の対象は、あくまでも高校の授業料です。また、東京都や大阪府で実施される予定の私立高校授業料無償化も対象は授業料で、それ以外の費用に関しては負担する必要があります。実際、高校に入学する際には、授業料以外にも以下のような費用がかかります。

・入学金
・教材費
・制服代
・部活動費用
・私立高校における設備費

これらの費用は、学校によって大きく金額が異なります。特に私立高校の場合は、設備費などが高額になることも少なくありません。授業料無償化はありがたい制度ですが、高校入学時には授業料以外にもさまざまな費用がかかることを覚えておきましょう。

具体的にどの程度の金額を準備する必要があるかは以下の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。
高校の入学費用はいくら?入学金以外にかかる費用も紹介

まとめ

高校無償化の制度は、保護者にとって必ずチェックしておきたい重要な制度の1つです。所得要件を満たす家庭は決して少なくないため、高校無償化(高等学校等就学支援金)の制度の内容について理解を深めておきましょう。

ただし高校無償化の制度を利用しても、授業料の一時的な自己負担が必要になることや、授業料以外に負担する費用があることなど、注意すべきポイントもあります。

高校無償化の制度を利用できることがわかっていても、ある程度の蓄えは用意したうえで、高校入学の準備を進めるようにしましょう。

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