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2021.03.22     2021.08.02

「高校無償化」はいつから?制度の仕組みや手続きの流れを解説

「高校無償化」はいつから?制度の仕組みや手続きの流れを解説

近年話題になっている「高校無償化」の制度は、高校入学を控えるお子さまをお持ちの皆様にはチェックしていただきたい制度です。受給資格の条件や、いくら支援を受けられるのかなど、気になるポイントは多いでしょう。

そこで今回は、高校無償化の制度を利用するために知っておきたい受給資格や受給額、申請手続きの方法などを紹介します。

そもそも「高校無償化」とは?

まず、高校無償化制度の概要を整理しておきましょう。近年話題になっている高校無償化の制度とは、どのようなものなのでしょうか。

「高校無償化」は「高等学校等就学支援金制度」のこと

高校無償化制度の正式名称は、「高等学校等就学支援金制度」です。2010年に開始した国の制度で、受給資格を持つ生徒には国から支援金が出るため、高校の学費が実質無償になります。

受給資格

次に、高校無償化の受給資格をモデルケースで確認しておきましょう。

高校無償化は、公立高校・私立高校のどちらに通う生徒でも対象となります。全日制、定時制、通信制も問われません。また中等教育学校の後期課程、特別支援学校、高等専門学校などについても、受給資格を満たせば授業料が実質無償になります。

受給資格を得るには、日本に住所があることが前提で、保護者の所得には条件があります。
保護者の所得が高等学校等就学支援金制度の受給資格を満たすかどうかは、以下の計算式に当てはめることで求められます。

保護者の市町村税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除額

計算結果が30万4,200円未満となる場合は、支援金の受給が可能です。

【受給資格を満たすモデルケース①】
・両親のうち1人が働いている
・年収約910万円未満
・高校生の子どもが1人
→年間11万8,800円(=公立高校の授業料)の支給対象

【受給資格を満たすモデルケース②】
・両親のうち1人が働いている
・年収約590万円未満
・高校生の子どもが1人
→年間39万6,000円の支給対象(私立高校の場合も実質無償になる)

支給額

上記のとおり、受給資格を得るには高校無償化制度を受ける高校生の保護者の所得が関係します。
受給資格を満たすかどうかを判断する際は、世帯構成や共働きの有無などをチェックしたうえで、年収ではなく所得割額や課税標準額を基準にします。
モデルケースでは目安として「年収910万円」「年収590万円」と表記していますが、実際には所得要件を算出する計算式が使われ、所得割額や課税標準額が判定基準として見られるため注意が必要です。

また、加算支給などは家庭の事情によって異なります。支給額は世帯ごとの収入の状況を見たうえで決定されるため、制度を利用する際は内容をよく確認する必要があります。

国公立の高校なら授業料が実質無償に

国公立の高校の授業料は、全日制の場合は年間で11万8,800円(月額9,900円)、定時制高校・単位制高校は1単位あたり年間330円です。
そのため世帯年収が910万円以下の家庭では、支援金制度を利用することで授業料が実質無償になります。

私立高校も実質無償に!「私立高校授業料実質無償化」の仕組み

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2020年には高校無償化の対象が拡大され、受給資格を満たせば私立高校も無償で通うことができるようになりました。その仕組みを詳しく見ていきましょう。

2020年4月から「私立高校授業料実質無償化」がスタート

高校無償化制度の改正前は、公立高校に通う場合の支援額(年間11万8,800円)に、保護者の所得に応じて3段階で支援額が加算される仕組みでした。

しかし支援金の加算のみでは、公立高校と比べて高い私立高校の授業料はカバーできませんでした。支援金が加算される家庭でも、私立に通う場合は完全な無償化にはならず、差額を負担せざるを得なかったのです。

2020年4月に制度の内容が大きく変わり、原則として年収約590万円未満の世帯は高等学校等就学支援金の上限額が上がり、年間39万6,000円(=私立高校の授業料相当額)が支給されることになりました。

「私立高校授業料実質無償化」の支給限度額とは

上述のとおり、全日制の私立高校に通う場合の支援金の限度額は年間39万6,000円です。
また、通信制の私立高校に通う場合は、年間29万7,000円まで支給されます。

年収が590万円以上910万円未満の世帯は対象外

では、受給要件を満たさない家庭のお子さまが私立高校に通う場合はどうなるのでしょうか。私立高校授業料無償化の制度で支援金を受け取るためには、原則として世帯年収が590万円未満である必要があります。

残念ながら、年収が590万円以上の世帯は対象外です。年収590万円以上910万円未満の場合は、制度改正前と同じで年間11万8,800円が支給されます。そのため、年収590万円以上910万円未満の家庭のお子さまが私立高校に通う場合は、差額を負担しなければなりません。

通信制高校などの単位制の学校についても同様です。年収が590万円未満の場合、単位制高校では1単位あたり1万2,030円まで支給されますが、年収が590万円以上910万円未満の場合は1単位あたり4,812円までの支給となるため、差額を負担することになります。

高校無償化制度はいつ申し込めばよい?手続きの流れを解説

ここからは、高校無償化制度で支援金を受け取るための手続き方法や、申し込みから受け取りまでの流れを詳しく解説します。

高校入学後に申請を行うのが基本

高等学校等就学支援金制度で支援を受けるには、原則として高校入学後に申請手続きを行う必要があります。所得要件を満たしていれば、自動的に支援を受けられるわけではないので注意しましょう。手続き方法については学校から案内が来るため、案内に従って申請を行います。

また、地域によっては都道府県などの自治体が実施する就学支援制度を利用できる場合もあります。国の制度とは別なので別途申請する必要がありますが、高等学校等就学支援金制度と同様に案内をよく確認しておきましょう。

申請に必要なもの

高校無償化制度で支援を申請する際には、以下の書類が必要です。

・申請書類
・保護者のマイナンバーがわかる書類

保護者のマイナンバーがわかる書類は、マイナンバーカードの写しもしくはマイナンバー通知カードの写し、マイナンバーが記載された住民票の写しなどです。

なお、親権者全員分のマイナンバーが確認されるため、親権者が両親の場合は両親2名分の書類が必要になります。

申請の際、都道府県によっては別の書類も必要になる場合があります。地域や学校を問わず必要になる書類は上記の2点ですが、別途必要になる書類があるかどうか、学校からの案内をよく確認するようにしましょう。

在校生で新たに申請を行う場合

高校無償化の制度は、現在高校に在校している場合にも申請が可能です。家庭の収入についての書類を届け出る時期は7月頃と定められており、申請の時期が近づくと学校から案内される仕組みになっています。学校から案内が届いたら、案内に従って申請しましょう。

申請はオンラインでも可能

2020年4月の改正前までは、高校無償化制度の申請は学校に必要書類を提出するかたちで行われていました。しかし、現在はオンラインでも申請が行えるようになっています。

オンラインで高校無償化制度の利用を申請する際は、学校から通知されるIDとパスワードを利用し、専用サイト「e-Shien」で案内に従って行います。

「高校無償化」を申請する際の注意点

高校無償化の制度を利用する際には、いくつか注意すべき点があります。家庭の収入に応じた上限額の支援金を受け取れるように、申請前に以下の注意点を把握しておきましょう。

所得の基準や計算方法は都道府県ごとに異なる

高校無償化制度における所得基準や計算方法は、都道府県や学校よって異なります。申請の際の必要書類の提出期限についても地域によって異なる場合があり、必ずしも期限が同じとは限りません。

受給資格を満たす所得要件の判定においては、家族構成や生計維持者が誰にあたるかなど、さまざまな条件が定められています。そのため高等学校等就学支援金の支給額は、家庭によって大きく変わるのが特徴です。

目安は一般的な目安として把握したうえで、実際の支給額はいくらになるのかは必ず確認するようにしましょう。

入学前に支払う授業料は一旦自己負担する必要がある

高等学校等就学支援金制度の支援を受ける際は、受給資格を満たす場合でも、一旦授業料を自己負担する必要があります。

高校無償化制度では、受給資格を満たしていれば自動的に授業料が免除されるわけではなく、高校入学後に支援の手続きを行う必要があります。
手続きは、基本的に入学した高校を通して行うことになります。

つまり高校入学後に手続きを行い、申請が通るまでは、支援を受けられることが確定していない状態ということです。よって、入学前に支払う授業料については一旦自己負担する必要があります。

支援金は、申請が受理された後、学校に支払われるため、自己負担した授業料が返金されるのはその後になります。返金時期の目安は、7月以降です。

受給条件を満たす場合でも、一旦授業料を自己負担する必要があることを覚えておきましょう。

高校無償化制度を利用しても、ある程度の貯蓄は必要

高校無償化の制度を利用して授業料が実質無償になったとしても、授業料以外の費用はかかります。したがって授業料が無償になっても、ある程度の学費の蓄えは必要です。

高等学校等就学支援金制度の対象は、あくまでも高校の授業料です。高校入学の際は、授業料以外にも以下のような費用がかかります。

・入学金
・教材費
・制服代
・部活動費用
・私立高校における設備費

これらの費用は、学校によって大きく金額が異なります。特に私立高校の場合は、設備費などが高額になることも少なくありません。授業料無償化はありがたい制度ですが、高校入学時には授業料以外にもさまざまな費用がかかることを覚えておきましょう。

まとめ

高校無償化の制度は、保護者にとって必ずチェックしておきたい重要な制度の1つです。所得要件を満たす家庭は決して少なくないため、高校無償化(高等学校等就学支援金)の制度の内容について理解を深めておきましょう。

ただし高校無償化の制度を利用しても、授業料の一時的な自己負担が必要になることや、授業料以外に負担する費用があることなど、注意すべきポイントもあります。

高校無償化の制度を利用できることがわかっていても、ある程度の蓄えは用意したうえで、高校入学の準備を進めるようにしましょう。

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