2025.04.07
「高校無償化」について制度の仕組みや手続きの流れを解説

近年話題になっている「高校無償化」の制度は、高校入学を控えるお子さまをお持ちの皆さまにはチェックしていただきたい制度です。申請はいるのかやいくら支援を受けられるのかなど、気になるポイントは多いでしょう。
そこで今回は、高校無償化の制度を利用するために知っておきたい申請手続きの方法や受給額などを紹介します。
高校無償化の目的と内容は?
「高校無償化制度」の正式名称は「高等学校等就学支援金制度」です。2010年にスタートした国の制度で、教育の機会均等を目指し、教育にかかる家庭の経済的負担軽減を目的として、高校に通う生徒に対して授業料の支援金が国から支給されます。
2025年4月からは、この制度がさらに大きく変わります。これまで受給には世帯年収などの制限がありましたが、新制度では所得制限が撤廃され、すべての生徒が対象になり、公立・私立を問わず一律年間11万8,800円支給されます。
また2026年4月からは私立高校を対象に加算されている就学支援金の上限額の所得制限を撤廃し、私立の全国平均の授業料である45万7,000円に引き上げられる予定です。
さらに低中所得世帯を対象に教材の費用などを支援する「奨学給付金」や、私立が無償化され志願者が減ることが考えられる公立の工業や農業など専門高校の施設整備の支援を拡充しようとする動きもあります。
この高校無償化により、教育費負担の軽減から進学率向上や教育格差の縮小が期待されます。
東京と大阪ではどの世帯でも私立高校の授業料が無償化!
国の高等学校等就学支援金制度だけでなく、東京都と大阪府でも今までは年収910万円未満の世帯を私立高校授業料無償化の対象としてきましたが、東京都は2024年度から所得制限を撤廃、大阪府は段階的に所得制限を撤廃し、すべての世帯で私立高校授業料の無償化を受けることが可能となります。
東京都の私立高校授業料無償化
東京都では2024年度から、保護者が東京都在住の場合、私立高校に48万4,000円、公立高校に11万8,800円の就学支援金を所得制限なしで給付しています。
大阪府の私立高校授業料無償化
大阪府は令和6年度の高校3年生から段階的に適用し、令和8年度に全学年で授業料を完全無償化します。授業料の支援に対し、東京は48万4,000円までという基準を設けているのに対し、大阪は基準がありません。授業料に関しては完全に無償化されます。
また、基本的には府内の私立高校に通う子どもがいる世帯に対しての支給となりますが一部、府内から府外に通学している子どもがいる世帯にも適応される場合があります。
詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
大阪府の高等学校等の授業料無償化制度について
高校無償化制度には申請が必要!
ここからは、高校無償化制度で支援金を受け取るための手続き方法や、申し込みから受け取りまでの流れを詳しく解説します。
高校入学後に申請を行うのが基本
高等学校等就学支援金制度で支援を受けるには、原則として高校入学後に申請手続きを行う必要があります。自動的に支援を受けられるわけではないので注意しましょう。手続き方法については学校から案内が来るため、案内に従って申請を行います。
また、地域によっては都道府県などの自治体が実施する就学支援制度を利用できる場合もあります。国の制度とは別なので別途申請する必要がありますが、高等学校等就学支援金制度と同様に案内をよく確認しておきましょう。
申請に必要なもの
高校無償化制度で支援を申請する際には、以下の書類が必要です。
・申請書類
・保護者のマイナンバーがわかる書類
保護者のマイナンバーがわかる書類は、マイナンバーカードの写しもしくはマイナンバー通知カードの写し、マイナンバーが記載された住民票の写しなどです。
なお、親権者全員分のマイナンバーが確認されるため、親権者が両親の場合は両親2名分の書類が必要になります。
申請の際、都道府県によっては別の書類も必要になる場合があります。地域や学校を問わず必要になる書類は上記の2点ですが、別途必要になる書類があるかどうか、学校からの案内をよく確認するようにしましょう。
在校生で新たに申請を行う場合
高校無償化の制度は、現在高校に在校している場合にも申請が可能です。家庭の収入についての書類を届け出る時期は7月頃と定められており、申請の時期が近づくと学校から案内される仕組みになっています。学校から案内が届いたら、案内に従って申請しましょう。
申請はオンラインでも可能
2020年4月の改正前までは、高校無償化制度の申請は学校に必要書類を提出するかたちで行われていました。しかし、現在はオンラインでも申請が行えるようになっています。
オンラインで高校無償化制度の利用を申請する際は、学校から通知されるIDとパスワードを利用し、専用サイト「e-Shien」で案内に従って行います。
高校生等への修学支援:文部科学省(高等学校等就学支援金オンライン申請システム e-Shien)
高校無償化で気をつけること
高校無償化の制度を利用する際には、いくつか注意すべき点があります。申請前に以下の注意点を把握しておきましょう。
入学前に支払う授業料は一旦自己負担する必要がある
高等学校等就学支援金制度の支援を受ける場合でも一旦授業料を自己負担する必要があります。
というのも手続きは、基本的に入学した高校を通して行います。なので申請が通るまでは、支援を受けられることが確定していない状態ということです。よって、入学前に支払う授業料については一旦自己負担する必要があります。
支援金は、申請が受理された後、学校に支払われるため、自己負担した授業料が返金されるのはその後になります。返金時期の目安は、7月以降です。
申請が受理されても一旦は授業料を自己負担する必要があることを覚えておきましょう。
高校無償化制度を利用しても、すべて無料ではない!
高校無償化の制度を利用して授業料が実質無償になったとしても、授業料以外の費用はかかります。したがって授業料が無償になっても、ある程度の学費の蓄えは必要です。
高等学校等就学支援金制度の対象は、あくまでも高校の授業料です。また、東京都や大阪府で実施される予定の私立高校授業料無償化も対象は授業料で、それ以外の費用に関しては負担する必要があります。実際、高校に入学する際には、授業料以外にも以下のような費用がかかります。
・入学金
・教材費
・制服代
・部活動費用
・私立高校における設備費
これらの費用は、学校によって大きく金額が異なります。特に私立高校の場合は、設備費などが高額になることも少なくありません。授業料無償化はありがたい制度ですが、高校入学時には授業料以外にもさまざまな費用がかかることを覚えておきましょう。
具体的にどの程度の金額を準備する必要があるかは以下の記事で紹介しています。合わせてご覧ください。
高校の入学費用はいくら?入学金以外にかかる費用も紹介
まとめ
高校無償化の制度は、保護者にとって必ずチェックしておきたい重要な制度の1つです。高校無償化(高等学校等就学支援金)の制度の内容について理解を深めておきましょう。
ただし高校無償化の制度を利用しても、授業料の一時的な自己負担が必要になることや、授業料以外に負担する費用があることなど、注意すべきポイントもあります。
高校無償化の制度を利用できることがわかっていても、ある程度の蓄えは用意したうえで、高校入学の準備を進めるようにしましょう。
この記事を家族や友人に教える
明光プラスで読みたい記事のテーマを募集
明光プラスでは読者の方のご期待に沿えるように読みたい記事のテーマを募集しています。ぜひ下のリンクからアンケートにお答えください。
あわせて読みたい記事
-
学校でのSDGs教育とは?受験生にSDGsって関係あるの?
2022.05.02
近年、「SDGs」や「持続可能性」という言葉を耳にする機会が増えましたが、実は教育現場にも、SDGsが取り入れられることが増えています。本記事では、SDGsが具体的に何を指しており、学校では...
-
VUCA時代とはどんな状況?VUCA時代を生き延びるための教育とは
2022.02.24
現代社会の状況を示した「VUCA時代」とは、どのような意味かご存じでしょうか。VUCAは近年、教育の新キーワードとしても注目を集めています。 お子さまの教育や将来に、VUCA時代がどう影響す...
-
主権者教育とは?意味や目的とこれからの受験への関わりについて簡単に解説
2022.02.15
日本では長年、若者の政治への参加意識の低さが問題となっています。次世代を担う子どもたちの政治に関するリテラシーを育む必要があることから、「主権者教育」は1つのキーワードとしてクローズアップさ...