2022.02.15 2023.10.08
主権者教育とは?意味や目的とこれからの受験への関わりについて簡単に解説
日本では長年、若者の政治への参加意識の低さが問題となっています。次世代を担う子どもたちの政治に関するリテラシーを育む必要があることから、「主権者教育」は1つのキーワードとしてクローズアップされています。
本記事では、主権者教育とは何かについて簡単に分かるよう紹介し、その本質的な狙いを解き明かすとともに、今後の受験・入試にどのように関わってくるのかも解説します。
主権者教育とは
まず、主権者教育とは何かを、政府が定める主権者像の定義を含めて解説しましょう。
政府は主権者教育について明確な定義をしているわけではありませんが、平成23年に主権者像として「国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者」と掲げています。
また、平成28年には、主権者教育の方向性として「身近な問題から社会問題まで、年代や環境に応じた題材により、考える力、判断する力、行動していく力を醸成する多様な取組が求められる」としています。
出典:総務省ホームページ
つまり、主権者教育とは、若者を選挙に行かせるだけでなく、政治的リテラシーを持ち、国や社会の課題を自分ごととしてとらえ、よりよい社会を作るために自ら政治に参画していく人を育成することがテーマなのです。
また、総務省は主権者教育の具体的な方策として、参加型学習によって大人も子どもも学び続けられるような教材を提供しています。
主権者教育が推進される背景
政府は本腰を入れて主権者教育を推進していますが、その背景には若者の得票率の低下や制度の変化などがあります。この背景について詳しくお伝えします。
長期低迷する日本の投票率
日本の各種選挙における投票率は、昭和時代から低下傾向が続いています。たとえば、衆議院選挙における国民全体の投票率は、昭和42年に73.99%だったのに対し、平成5年には67.26%、平成29年には53.68%となっているのが現状です。
出典:総務省ホームページ
国際比較でも日本の投票率は低く、オーストラリアの91.9%、スウェーデンの87.2%などと比べると圧倒的な差があることが分かります。
出典:明治大学国際日本学部
日本が持つ民主主義の根幹が問われる問題として、早急な対策が求められています。
特に低い若者の投票率
日本全体の投票率の低さも問題ですが、さらに深刻な問題となっているのが若い世代の投票率の圧倒的な低さです。
上述の平成29年のデータでは、国民全体の投票率53.68%なのに対し、20代の投票率は33.85%となっており、もっとも投票率の高い60代の72.04%と比べると、投票率は半分以下となっています。
年代が若いほど投票率が下がっているのは、将来的に国民全体の投票率がさらに低下することを意味すると考えてよいでしょう。
また、投票者の大半が高齢者だと、社会保障をはじめ国の予算が高齢者向けに使われやすくなって若者世代への支援が減り、結果的に人口減少につながるといった問題に発展する可能性もあります。
教育改革により、これからの世代の意思が反映される政治にしていくことが求められています。
18歳選挙権の導入
2015年に公職選挙法が改正され、選挙権の下限が20歳から18歳に引き下げられたことも、主権者教育が急がれる理由です。
元々、18歳選挙権が導入された背景には、出生率の低下に伴う若手人口の減少があります。高齢者が増えており、若手人口と高齢者の人口比率のバランスが崩れてしまうため、選挙権を持つ若者を増やすための政策として取り入れられたのです。
また、世界的に見れば18歳から選挙権を得られる国が多いことや、日本国憲法の改正に必要な国民投票は18歳以上が対象になっているという年齢上の矛盾を解消することも、導入の理由として挙げられます。
主権者教育のこれからの課題
このような背景から、日本では主権者教育が急務となっていますが、教育が成果を出すまでにはさまざまな課題があります。主権者教育を行う中で、主な課題となるポイントをお伝えします。
選挙に行かせることが主権者教育?
まず、一番の課題として考えられているのが、主権者教育が「若者を選挙に行かせるための教育」だととらえられがちなことです。
確かに、投票率の向上は主権者教育が叫ばれるようになったきっかけの1つです。しかし主権者教育は「国や社会の問題を自ら考え判断し行動する人材を育てる」ことが目的であり、選挙に行かせることがゴールではありません。
主権者教育を通じて政治に自ら参加していく人材が育った結果、必然的に投票率も上がることが理想です。教育を行う上でも、主権者教育の目的を子どもたち・教育者の双方がしっかりと理解しておく必要があります。
主権者意識を育てるということ
主権者意識を育てることも、主権者教育の目的であり、教育を通じて取り組まなければならない課題です。
民主主義の本質的な目的・条件は、民意が反映されることです。そして、民意が反映されるためには公正な選挙制度があることと同時に、市民の側にも自分の意思を反映させようとする主権者意識と能力が欠かせません。
よって、民主主義を適切に機能させ続けるために、主権者意識を持たせる教育が必要となるのです。
大学入試との兼ね合い
18歳は大学入試があるため、主権者教育との兼ね合いが難しいという課題もあります。近年においては、主権者教育は入試とはあまり関係のない教育だと受け止められているため、どうしても入試を優先させてしまい、主権者教育を積極的に行いづらい状態です。
すでに入試問題に主権者教育の内容が取り入れられた例はあり、主権者教育と入試との関連性は生じ始めていますが、まだまだ改善の余地はあるといえるでしょう。
主権者教育は受験と関係ある?
まだ改善の余地が多いとはいえ、大学受験においても主権者教育を取り入れた内容が徐々に増え始めています。どのような内容が受験内容や勉強科目として登場しているか解説しましょう。
出題テーマとしての主権者教育
まず大学受験においては、社会科のテーマの1つとして主権者教育にまつわるものが好まれるようになってきています。憲法や法律などの内容を問うだけでなく、政治の内容に関して自分の意見を出す設問も出題されています。
この設問では、受験生が政治についてどの程度理解し、自分の意見を持っているかという主権者意識が問われていると考えられます。普段から政治に興味を持ち、考える習慣をつけることが欠かせません。
このような設問においては、出題する大学の「政治について理解しておいてほしいと思うポイントがどこか」という意図が含まれています。出題の意図をくみ取り、事前に勉強しておくと対策につながるでしょう。
「公共」科目の導入
主権者教育を直接担う科目として「公共」を導入するという動きもあります。18歳選挙権を視野に入れて構想が行われた科目で、2022年度から高校の公民科における必修科目となり、2025年度からは共通テストでも選択科目となる予定です。
「現代社会」の代わりとして科目になるため、政治経済、法律、倫理などの内容も、「公共」の科目に含まれます。
高大接続改革と響き合う主権者教育
高校教育と大学教育をひとつながりのものとしてとらえる「高大接続改革」の中に、主権者教育を位置づけるという動きもあります。
高大接続改革では、今の子どもたちがVUCA時代の担い手となるための思考力・判断力・表現力が重視されています。こうした正解のない社会の問題に向き合い判断していく生徒像は、主権者教育とも重なります。
主権者教育の求める人物像に沿った学習を行うことで、これからの入試にも社会にも対応していけるお子さまになっていくことが理想といえるでしょう。こうした動きからも、主権者教育の重要性がさらに増していくと想定されています。
●VUCA時代の教育については下記もご参考にしてください。
VUCA時代とはどんな状況?VUCA時代を生き延びるための教育とは
ご家庭で取り組める主権者教育
主権者教育は、これから受験にもさらに関係してくると考えられます。単なる知識としてではなく、理解度や主体性が問われる内容なので、家庭でも教育として取り入れるのが効果的です。ここからは、ご家庭で取り組める主権者教育として、どのようなものがあるかをお伝えします。
自分のことをお子さまに決めさせる
まず、前提として重要なのは、お子さまの主体性を尊重することです。主権者意識において重要なのは、自分で理解し行動すること。保護者の意見を押し付けると逆効果になりかねないので注意しましょう。
ただし、好きにさせるだけではなく、問題についてよく調べ・考え・話してベストの道を選ぶことが大切だと伝えることは必要です。
明光では、授業の中核に「話す」ことを置き、主体性を育む学習を重視しています。お子さまそれぞれの個性を尊重し、主体性を引き出すノウハウを豊富に持っているため、ご家庭でお子さまの教育に時間を取るのが難しい場合は、明光のサポートもご活用ください。
身近な問題を「変える」体験をさせる
主権者教育では、主に国家に関する問題について学びますが、国家だけが主権の対象ではありません。部活動、生徒会、地域活動など、お子さまが自ら変えられる「社会」は身近にいくつもあります。
主権者教育を通して身の回りの問題について考え、人を動かして改善していくという経験をさせることで、経験に根ざした主権者意識を獲得することができるでしょう。社会で存在感をもって活躍していく人物となるための教育としても有効です。
保護者が主権者としての背中を見せる
家庭においては、お子さまに考えさせることも大事ですが、何より保護者が率先して主権者意識を持つことが重要です。お子さまは保護者の背中を見習い、自然と主権者意識を持てるようになるでしょう。
政治のかたちや選挙についてなど、普段から社会についての会話を行い、保護者がどのような主権者意識を持っているかを共有しましょう。
まとめ
若者の選挙への参加意識や、政治に対するリテラシーを育むための主権者教育についてお伝えしました。
主権者教育は近年になって強力に推進されています。学校教育の科目として導入が予定されているほか、共通テストや二次試験にでも出題される可能性が高く、受験への関連性も強まりつつあります。
ただし、主権者教育は他の科目と異なり、獲得した知識をもとに自分で考えて意見を持ち、行動することがもっとも重要です。そのため、知識の詰め込みではなくお子さまの主体性を育む教育が求められます。
主権者意識を育むには、ご家庭をはじめ学校外での教育も欠かせません。明光では、お子さまの個性を尊重し、主体性を引き出す教育を実践しています。お子さまに自ら考え行動し、解決していく力を身に付けさせたいとお考えの方は、ぜひ明光のサポートをご活用ください。
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