小学生

2019.02.20      2023.10.08

子育て心理学:みずから学ぶ子になる!? 知的好奇心を育てるコツ

編集担当

お子さんがたくさんの物事に興味・関心をもって、みずから積極的に学ぶ。保護者にとってこんなに嬉しいことはありませんよね。けれど、「広い視野を持ってくれない」「何事にもあまり関心を示さないような気がする」と悩む保護者は少なくありません。
そこで今回は、お子さんがみずから学ぶ際のキーになる「知的好奇心」にフォーカス。法政大学心理学科・渡辺弥生教授にその目覚めさせ方・育て方を教えてもらいました。

その1. 遊びの中にも学びがある! 多くの刺激に触れさせよう

その1. 遊びの中にも学びがある! 多くの刺激に触れさせよう

子どもだけでなく大人にも言えることですが、知らないことを知るということは本来、楽しいこと、嬉しいことです。反対に知らないままでいることはどこか気持ちが悪くありませんか。「知りたい!」という気持ち、すなわち好奇心は、ごく自然に出てくるものです。ですから、これを育てたいと考える場合、保護者は先走って何かをするよう求めたり、子どもの要求をあまり制限せず、危険がない範囲で挑戦させてあげることが大切です。お母さん(お父さん)も知りたいな!という応答的なかかわりが大切です。

子どもの遊びと勉強は、すっぱりと分けることはできません。子どもたちはさまざまな経験の中から必要なことを学んでいきます。
移動中にぼうっと景色を眺めているようで、実はバスの運賃箱に入るお金の計算をしていることもあります。そこから数学や経済に興味を持つこともあるでしょう。ほかにも、あまり役に立たなさそうな本を読んでいたり、ゲームをしていたり、おしゃべりばかりしたりと、子どものしていることは保護者の目からは無駄だと思えることがたくさんあります。「そんなことより机に向かって勉強をしたら?」と言いたくなるかもしれませんが、その間にもお子さんはさまざまな発見をしていることがあるのです。遊びと勉強を対立軸に置かずに、遊びの中にこそ生きる学びを知るチャンスがあると思いましょう。世の中のたくさんの刺激に触れることは知的好奇心を芽生えさせるための第一歩。「勉強しなさい」ばかりではなく、まずは気長にお子さんのしていることを見守ってあげてみてください。

好奇心には2種類ある

好奇心は大きく2種類に分けることができると言われています。これらは「特殊的好奇心」と「拡散的好奇心」と呼ばれ、前者は特定のジャンルに深く入れ込んでいくタイプのもの、後者は幅広くさまざまな物事に興味関心を抱くタイプのものです。
2つはどちらかが重要だということはなく、それぞれに利点があります。

その2. 前向きな声かけで挑戦する心を応援しよう

その2. 前向きな声かけで挑戦する心を応援しよう

好奇心を育てる際には、報酬となるポジティブな反応(強化)が有効だということで用いられます。お子さんが何かに挑戦したときは、その結果がどうであれ「○○はできたね」「すごいね」と褒めてあげたり、認めてあげることです。するとお子さんは「また今度やってみよう」と考えるでしょう。この繰り返しで挑戦意欲が旺盛な子へと育っていきます。

反対に、何かに失敗してしまったときに叱られると、子どもは「失敗は許されないことなんだ」「よくない行動なんだ」と考えるようになります。すると挑戦することが怖くなり、少しずつ意欲が削がれていきます。悪い行動はもちろん制限する必要はありますが、チャレンジする行動は、その気持ちを讃えてあげましょう。

人の考える「成功したい」と「失敗したくない」は実はイコールではありません。「失敗したくない」と考えるクセがついてしまっている人は、実は目標に達することよりも、他人の視線が怖くて、つまり、他人の評価を気にしすぎている場合が多くなっています。そのため、自分の中からやってみたいという内発的動機がなくなり好奇心を失いがちです。人からよく見られるたいと焦るばかりで、臆病になってしまいます。

好奇心が薄い子には「達成動機づけ」を

人はどんなときに「挑戦してみよう」「やってみよう」と思うのでしょう。いくつか要因はありますが、ひとつは「自分にもできそうだ」(自己効力感)と思えるものごとを知ったときです。

あまりにも簡単すぎること、または難しいことにはなかなか挑戦しようとは思えません。けれど「やったらできそうだ」と思うことにはつい挑戦したくなるようです。

このような現象を心理学の言葉で「達成動機づけ」と呼びます。何事にもあまり関心を示さないように見えるお子さんには、何かまず「できそうなこと」を示してあげて、成功体験をさせてあげましょう。

編集担当

簡単にクリアできそうなゲームよりも、ちょっと頑張らなければいけないゲームの方が取り組みたくなります。それと同じ気持ちですね!

その3. すぐにできる!好奇心を目覚めさせる環境づくり

その3. すぐにできる!好奇心を目覚めさせる環境づくり

海外の学校などを見ていると、子どもが寝っ転がって本を読んだり、空き教室で自由におしゃべりができるようになっていたり、教室が博物館のようになっていたりと好奇心をくすぐるデザインや構造になっている様子がうかがえます。
一方、日本の教室は昔ながらの画一的な空間が多く、授業に集中させようと思うばかり居場所感を与えていません。あまりリラックスして何かを楽しむ、ということはしづらい空間です。

これはもしかしたら自宅や子ども部屋にも当てはまるかもしれません。みなさんのご家庭の子ども部屋はどのような環境になっているでしょうか。
もしもお子さんの好奇心を育てることを優先したいのであれば、家具の位置やカーテン、カーペットなどの色を工夫して部屋の雰囲気を変えたり、リラックスして本が読める環境をつくったりしてみるといいかもしれません。キメキメの空間でなく、お子さんと一緒に居場所づくりを考えるとよりやる気を喚起すると思います。しなければならない勉強をする環境ではなく、居心地がよくお子さんがリラックスできる部屋が好奇心を育てていきます。

いつもと少し違うお皿で食事を出してみる、変わった食材を使ってみる、といった物事も好奇心をくすぐるきっかけになります。日常の中で少しずつさまざまな経験をさせてあげることが、お子さんにとっては良い刺激になるでしょう。

また、お子さんの興味・関心を広げるために旅行やレジャーに連れて行かれる場合は、保護者がまず楽しむ心の余裕が大切です。お子さんに「これを見てみなさい」「食べてみなさい」と声をかけるのではなく、保護者自身が童心に返って「真っ青な空ね!」「何の音かしら」「これ初めてみるわね!」といった楽しむ心がお子さんのワクワクする気持ちを湧き起こさせることができるのです。

法政大学心理学科 渡辺弥生教授
法政大学心理学科
渡辺弥生教授

先生からのメッセージ

子どもは、ファンタジーの世界が広く、目にするもの、耳にするものに興味関心を抱き、「あれを見てみたい」「これを食べてみたい」という要求は大人よりも強いものです。大人はどうしても現実的になりがちで、メリーポピンズやクマのプーさんのように、純粋にファンタジーを楽しめなくなってしまい、 「あれもだめ」「これもだめ」と制限ばかりしがちです。するとやがて子どもはそのような要求をしなくなってしまいます。子どもの知的な好奇心こそ、大人自身が子供たちの望んでいる幸せを運ぶ鍵になります。Unlock potentialという言葉があります。子どもの豊かな原動力の広がりに、蓋と閉めたり鍵をかけないで、ワクワクした気持ちを生かしてあげることが大切でしょう。

この記事を家族や友人に教える

関連タグ

あわせて読みたい記事

タグ一覧

おすすめ記事

おすすめ記事

Home > 明光プラス > 小学生 > 子育て心理学:みずから学ぶ子になる!? 知的好奇心を育てるコツ