その他

2021.09.01      2023.10.07

算数と数学の違いとは?数学でつまずいたら算数からやり直したほうがいいの?

算数と数学の違いとは?数学でつまずいたら算数からやり直したほうがいいの?

小学校の「算数」、中学校や高校の「数学」と、よく似た教科がありますが、内容にどのような違いがあるのでしょうか。 「算数は得意だったけど、数学になった途端に分からなくなった」という人も少なくありません。

この記事では、算数と数学の違いを説明し、勉強するうえで知っておきたいことや勉強につまずかないための対策などを紹介します。

【算数と数学の違い】算数はどんな教科?

まずは、小学校で学ぶ「算数」がどのような教科なのかを説明します。

算数とは?

算数は、もともと「数をかぞえる」や「計算する」という意味がある言葉です。
現在は、その言葉がそのまま教科の名前となっていますが、算数が教科名として用いられるようになったのは、1941年(昭和16年)からです。

それまでは、現在の算数にあたる教科は「算術」と呼ばれ、明治時代から四則計算を中心に子どもたちに教えられていました。
その後、学習する内容に代数や幾何(きか)が含まれるようになり、1941年に当時の小学校が国民学校に移行したタイミングで、名称が「算数」に改められ、現在に至ります。

算数の学習内容

算数の学習内容は、「数と計算」、「図形」、「測定/変化と関数」、「データの活用」と、大きく4つの領域に分かれます。順番に見ていきましょう。

数と計算

整数や小数、分数などの「数」そのものの概念を理解して、式を用いた計算方法を学びます。
足し算、引き算などの四則計算を中心に、算数の基礎となる「計算力」を身に付けます。

図形

基本的な図形や空間について理解し、図形の面積や空間の体積の求め方を学びます。
面や辺、角など、図形を組み立てるための要素や、図形間の関係に着目して、図形の性質や構成、計量について考える力を身に付けます。

測定/変化と関係

身の回りの「量」の概念や測定方法を理解し、実際に対象を測定します。
変化する2つの数量の関係などを踏まえて、変化の様子を表や式、グラフにまとめる方法を学びます。
2つの数量の関係を比べるための表や式を活用し、割合や比率を求める力を身に付けます。

データの活用

目的に応じてデータを集めて整理し、グラフに表したり、代表値を求めたりします。
データごとの特徴や傾向を把握し、問題に対して自分なりの結論を出すことや、その結論を客観的に見る力を身に付けます。

算数が目標とするもの

学習指導要領では、算数の目標を次のように定めています。
“数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け、日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え、表現する能力を育てるとともに、算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き、進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。”
「学習指導要領 第2章 各教科 第3節 算数」より引用

つまり、「学んだ知識を日常の生活に落とし込んで考え、実際に活用すること」が算数の目標です。

【算数と数学の違い】数学はどんな教科?

次に、中学以降で学ぶ「数学」がどのような教科なのかを説明します。

数学とは

数学は、数・量・図形そのものについて学ぶ「学問」です。
それぞれの数がどのような意味を持つのか、世の中で起こっていることをどのように数で表現するのかを学びます。

数学を学ぶ本質は、ものごとを抽象化して考えることと論理的思考を身に付けることにあります。
答えを出すことにこだわらず、なぜその答えになるのかという「プロセス」を追究する学問です。

位置づけとしては算数の延長線上にありますが、負の数や文字を扱うことからも分かるように、日常生活とは切り離して抽象的な観点を育てることに重きが置かれています。

数学の学習内容

数学の学習内容は、「数と計算」、「図形」、「関数」、「データの活用(※確率・統計)」と、大きく4つの領域に分かれます。順番に見ていきましょう。

数と式

負の数の概念を理解し、正の数と負の数を用いた四則計算について学びます。
方程式を解くために、文字を用いた式の計算ができる力を身に付けます。

図形

観察や操作、実験などを通して、平面や空間における図形について学びます。
角の二等分線や垂線などの基本的な作図方法のほか、平行移動や対称移動、回転移動など、2つの図形の関係を説明する力を身に付けます。

関数

複数の数量を取り上げて、それらの変化や対応について学びます。
比例、反比例の関係を踏まえて、それぞれの関数関係を見出す力を身に付けます。

データの活用(※確率・統計)

目的に合わせて資料を集め、コンピュータを用いて表に情報をまとめる方法や、さいころの目が出る確率を式から算出する方法を学びます。
代表値や資料の内容から傾向を読み取る力、統計を読み解く力を身に付けます。

数学が目標とするもの

学習指導要領では、数学の目標を次のように定めています。

“数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め、数学的な表現や処理の仕方を習得し、事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに、数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し、それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。”
「学習指導要領 第2章 各教科 第3節 数学」より引用

つまり、「数学的な観点で物事を考え、それらを表現したうえで、さまざまな判断ができるようになること」が数学の目標です。

算数と数学の本質的な違いとは?

算数と数学の内容を確認しましたが、結局どのような違いがあるのでしょうか。
ここからは算数と数学の違いについて、詳しく解説します。

算数と数学はどう違う?

算数と数学の大きな違いは「目的」です。

算数の目的は、計算で身のまわりの疑問を解決することです。
例えば、家から学校まで歩いたときにかかる時間や商品を複数買ったときにかかる合計金額など、日常生活に活用できる計算について学びます。
また、算数では「答えを出すこと」が重視されます。

一方、数学の目的は学問を通して思考力を高めることです。
負の数やx・yなどの文字を使って、世の中のできごとを理解するために学びます。
一次関数や方程式など、内容を抽象化して考える問題が多く、算数に比べると日常生活にはつながりにくいでしょう。
答えを出すことよりも、「答えに辿り着くまでのプロセス」を重視するため、記述問題や証明問題が多くなります。

もう「小学校=算数」ではない?

平成29年度に学習指導要領が改訂され、これまで小学校算数科に記載されていた「算数的活動」がなくなりました。

「算数的活動」は平成20年に告示された学習指導要領で「児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数に関わりのある様々な活動」と示され、算数に関する活動を通して、遊びながら考える楽しさや新しい知識を得る喜びを感じられるきっかけとなっていました。

その後、改訂された学習指導要領では算数的活動の代わりに「数学的活動」と記載されています。
数学的活動とは、日常の事柄から算数・数学の問題を見いだし、図、数、式などを用いて解決策を探る活動のことを指します。

このように、小学校においても数学的な問題の発見と解決の力を伸ばすことが求められるようになり、中学数学との関連性が強化されました。
またこれに伴って、先ほど説明した算数における数と式、図形などの4つの領域も、数学への連続性を意識したものに改められています。

プログラミングには数学が必須って本当?

小学校で必修科目となった、プログラミング授業。
プログラミングには数学の知識が必要なイメージがありますが、実際はどうなのか解説します。

学校でのプログラミング教育

現代は社会状況が目まぐるしく変化し、未来の予測が難しい時代です。
そのような時代を生き抜くには、コンピュータを活用する力や論理的思考力が求められます。

学習指導要領にも「コンピュータや情報通信ネットワークを活用した学習活動の充実を図る」 といった内容が盛り込まれ、2020年から小学校でプログラミング授業が必修となりました。

プログラミングは、求める結果から逆算して内容や方法を考える必要があるため、「どうすれば求める結果につなげられるのか」を筋道立てて考える論理的思考力が育まれます。

ただし、小学校におけるプログラミング教育については、具体的にやるべき内容が決まっているわけではありません。
学習指導要領の内容に合わせて、それぞれの小学校が比較的自由に授業を行なっています。

そのため、学習指導要領では算数におけるプログラミング授業の例として「正多角形の作図」を挙げていることから、プログラミングを用いて正多角形を書く授業がよく採用されています。

商業プログラミングの大半は「算数」の領分

ITやプログラミングと聞くと、難しい数学を使うイメージがあるかもしれません。
しかし、現実に扱われるプログラミングは算数レベルのものが大半です。
単純な四則計算程度の算数レベルの知識があれば問題ないでしょう。

表計算やデータベースの取り扱いなども、日常生活の数字を直接計算する「算数」そのものです。
したがって、数学を習っていない小学生でも十分プログラミングの授業が受けられます。

実は小学校の授業だけでなく、一般的なWebプログラミングでも数学の出番はあまりありません。

プログラミングの花形分野は数学の世界

ただし、人工知能、ビッグデータ、ゲーム制作などのいわゆる「プログラミングの花形」と呼ばれる分野では数学の知識が必要です。

人工知能の分野では微分積分や線形代数など、大学レベルの数学の知識が求められます。
ゲーム制作では、キャラクターがより現実的な動きをするように三角関数や物理演算を駆使しなければなりません。

これらは日常生活に必要な情報をそのまま扱うのではなく、さまざまなデータを抽象化して処理する必要があるため、算数の知識だけでは対応できません。

日常生活で答えを出す算数と、抽象化して思考する数学の違いはこういったところに現れます。

小学生が算数を得意にするには?

小学生が算数を得意にするには?

今後の数学のことなども考えると、できるだけ小学生の間に算数を得意教科にしておきたいものです。
ここからは、小学生が算数を得意にするにはどうすればよいのかを解説します。

正確さが重要

算数では「正確に解答を出すこと」にこだわる必要があります。
日常に役立てることが目的のため、途中のプロセスはあまり重視されず、最終的に出す答えの正解、不正解が重要です。

算数では、答えの数字が1でも違うと点数にならないため、計算間違いは避けなければなりません。
そのために必要なのは「正確な計算力」です。

計算力を高めることで正解できる問題が増え、算数のテストの得点が上がります。
不要な間違いが減ってテストの得点が上がれば、算数が得意だと感じられるでしょう。

計算ドリルを活用して何度も繰り返し計算問題を解き、基礎的な計算力を身に付けることが重要です。

手を広げるよりも復習に重点を置く

算数はセンスやひらめきが必要だと思われがちですが、得点を上げるためには「問題のパターンを知っているかどうか」が重要です。
特に、中学入試で出題される算数の問題は、近年ではひねりのある問題が増えているものの、パターンがほぼ決まっています。

問題のパターンを把握するには、同じ問題を何度も反復するのが効果的です。
そのため、複数の問題集を次から次へとこなすような勉強は必ずしも効果的とはいえません。
繰り返し学習は知識を定着させるうえでも効率がよいので、まずは1冊の問題集を完璧にすることを意識しましょう。

解けなかった問題は何度も繰り返して練習し、問題を見たら解き方がすぐに思い浮かぶ状態になることが理想です。
解き方が頭に入っていると、試験で同じパターンの問題が出たときスムーズに解答できます。

ただし、その状態まで持っていくには、算数の得意な人でも3回前後、苦手な人だと10回以上の復習が必要になるでしょう。
算数は積み重ねの学問なので、できないまま進むとその後の数学でも必ずつまずきます。
分からないところをそのままにせず、根気よく復習を重ねましょう。

算数を勉強する楽しさを引き出す

自ら算数の勉強を続けようと思うためには、勉強に楽しさを感じることが重要です。
教科書を読むだけ、ドリルを解くだけなど、単調な学習を続けていると、勉強へのモチベーションを保ちづらくなります。

まずは、日常生活の中で算数が活用できることを知っていくとよいでしょう。
「歩いて学校まで行く時間を計算してみよう」「お風呂にはどれだけのお湯が入るかな?」など、自分の勉強していることが実際の生活で使えることが実感できると、算数の勉強を楽しいと感じられます。

うまくできないことや覚えていないことについて保護者が怒ることは、算数を勉強する本人のモチベーションを下げてしまう原因です。
間違えたことや覚えてないことを𠮟られるような発言が続くと、「次も間違えたらどうしよう」という気持ちが大きくなり、算数が苦手になってしまいます。

苦手意識があるまま勉強すると、内容をうまく吸収できないため学習効率が落ちます。
保護者はできないことばかり見るのではなく、できるようになったことを褒めて伸ばしてあげましょう。

中学校で数学を苦手にしないためには?

ここからは、中学校で数学を苦手にしないためにはどうするべきかを説明します。

算数が得意でも数学でつまずいてしまう理由

算数から数学へと学習を進めるにあたって、まずは数学が算数のように「計算」するものではなく、「思考」する学問であるという本質的な違いを理解しておかなければなりません。
その違いを理解せず、数学を単なる算数の延長だと考えている人は、数学が苦手になる可能性が高いでしょう。

算数はほとんどの問題が四則計算で答えが出るうえ、日常生活から推測しながら考えられる内容が多いので、実はすべてを理解していなくても問題に答えられることもあります。

しかし、数学は負の数や文字などの概念を用いて抽象的に考える必要があり、解答するまでのプロセスを把握しておかなければなりません。
そのプロセスをうまく理解して説明できない場合、数学の勉強につまずくことになるでしょう。

中学数学でつまずかないためには

中学数学でつまずかないためには、知識に抜けがないような学習が重要です。
算数と数学は別物と説明しましたが、算数も数学も積み重ねの教科・学問だという点は共通しています。
例えば、二次関数には一次関数の知識が、一次関数には比例の知識がないと問題が解けません。

このように、算数、数学の知識はつながっているので、途中で分からないままのものがあると、それ以降の内容が理解できなくなります。
勉強していて行き詰まったときは、どこが分からないのかを突き止めて、その都度疑問を解消していきましょう。

また、算数・数学を学ぶうえで大切なのは、それぞれの公式を理解することです。
公式を丸暗記すると、少し問題の形式が変わっただけで対応できなくなります。
丸暗記するのではなく、公式がどうして成り立つのか、証明を読んで理解しましょう。

公式の理解に役立つのは、学校の教科書です。
教科書には問題を解くために必要な解説が詳しく載っており、解説を読めば問題が解けるように作られています。

まずは、教科書の問題を解きながら公式を理解し、解説を見なくても解けるようになるまで繰り返し問題を解きましょう。

中学数学でつまずいたら算数からやり直すべき?

中学数学は大きく、計算・図形・関数という項目に分けられますが、そのうち「計算」はすべての土台となるため、図形や関数を解くうえで必要不可欠な能力です。
したがって、数学の力を高めるためには、まずは計算力をつけることが最優先です。

数学は算数に比べて問題が複雑になり、問題を解く際の計算量も増えます。
計算力が足りていないと、そもそも数学の問題を時間内に解ききれないことが起こり得ます。
計算力が低いせいで、解ける問題を解く時間が取れないのは非常にもったいないことです。
まずは、計算力を高めることを意識しましょう。

また、中学数学でつまずいたとき、そもそも算数をしっかり理解できていない可能性があります。
数学は積み重ねの教科なので、基礎ができていないとどれだけ問題を解いても応用ができるようにはなりません。
どこでつまずいているのかを洗い出したときに、見つかった課題が算数の範囲であれば、迷わず算数からやり直しましょう。

中学数学と高校数学の違いは?

中学と高校は、同じ「数学」を学びますが、やはり学習内容には違いがあります。
ここからは、中学数学と高校数学の違いを説明します。

証明・推論がさらに重要となる

高校に入ると、算数と数学の違いであった証明・推論などの説明の重要性がさらに増し、その分計算の比率は減ります。
計算と推論は、中学数学が7:3程度の比率であったのに対して、高校数学では5:5程度まで推論の比率が高まります。

中学数学でも図形の合同や整数問題などの証明で推論が求められますが、ある程度パターンが決まっているため、難易度はそれほど高くありません。

しかし、高校数学では証明問題の比率も難易度が上がります。
公式に当てはめるだけで解けるような問題は少なくなり、複数の推論を組み合わせてようやく答えが出せる複雑な問題が増えます。
その推論のプロセスを分かりやすく示す必要があるため、数学の力だけではなく、説得力のある文章を書くための国語力も必要です。

このように、高校の数学を解くには、幅広い力が求められます。

1つの問題の複雑さが増す

高校数学は、1つの問題を解くためにやるべきことが多くなります。
中学数学では1つの問題に対して、1つの推論のプロセスを当てはめるだけでよいことが多いのですが、高校数学では場合分けを考える問題もあり、1つの問題に複数のプロセスが必要になることがあります。

解答を作るための作業も、式を作る、グラフや図を書く、推論を考えるなど、やることが多岐にわたります。
複雑な推論を考え続けて結論を出す必要があるため、高い論理的思考力や持久力が求められます。
問題を解き始めてから、思ったより長くなりそうだと感じても最後まで解くことが重要です。

こうした高校数学を攻略するためには、問題を解く前に自分で解き方の方向性を定めてから問題に取りかかることを意識しましょう。
解き始めてから解答の方向性が違うことに気付くと、それまでの時間が無駄になります。

高校数学では問題が複雑になるからこそ、効率よく解答を作っていく、という観点を持つことが大切です。

公式や定理の量がぐっと増える

高校数学は扱う範囲が広いため、多くの領域を細かく分けて学ぶことになります。
それに伴い、公式や定理などを覚える量も大幅に増加します。

中学数学の公式は数もそれほど多くなく、式の形も単純なものが大半ですが、高校数学は数が多いうえに、式の形も複雑なので、丸暗記は難しくなっています。
もし、中学数学の公式を丸暗記で乗り切っていたなら、高校数学では式の多さと難しさを痛感するでしょう。

公式は「なぜこの公式が成り立つのか」を理解しておくと、暗記できていなくても自分で導き出せます。
したがって、公式の意味や根拠を1つ1つ理解することが、高校数学で結果を出す近道です。

まとめ

算数は「答えを出すこと」、数学は「解答までのプロセスを表現すること」が求められるように、算数と数学の間には学ぶうえで大きな違いがあります。
それぞれ「解答するためには何が必要なのか」を考えながら学習に取り組むことが重要です。

算数も数学も積み重ねの教科・学問なので、分からないところをそのままにしておくと、その後の内容が理解できなくなります。
勉強する際は復習にしっかり時間を割き、分からないところを残さないように進めていきましょう。

もし理解できていない内容が見つかったら、たとえ習ってから時間が経っているような範囲でも、再び勉強し直すことが大切です。

この記事を家族や友人に教える

関連タグ

あわせて読みたい記事

タグ一覧

おすすめ記事

おすすめ記事

Home > 明光プラス > その他 > 算数と数学の違いとは?数学でつまずいたら算数からやり直したほうがいいの?