2017.01.25
心理学の専門家に聞く!思春期の子どもがいる家庭のコミュニケーション
話をしたがらない、無視をする、反抗的になる......。成長に必要な段階だとわかっていても、思春期のお子さんとコミュニケーションをとるのはなかなか大変なもの。どのように向き合って良いのか悩んでいる保護者はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、みなさんのお悩みを携え法政大学心理学科・渡辺弥生教授を訪ね、思春期の子どもとのコミュニケーションについてうかがってきました。
その1. 一人に負荷がかかりすぎるコミュニケーションは要注意
現代の日本の家庭では、一人の保護者(例:母親)が家族のコミュニケーションの中心となっているパターンが多いように思います。例えば、娘から父親に伝えておきたいことがあっても、直接会話をせず母親を介して要件を伝えるといった具合です。
家族の形は様々なので、これが一概に悪いこととは言えませんが、リスクはあります。中心となっている保護者が病気に罹った場合、あっという間に家族がバラバラになってしまうことがあるからです。また、中心となる保護者一人に過剰なストレスがかかってしまう場合もあります。とくに子どもが反抗的な態度をとるときは要注意。
もしもご家庭がこのような状態にある場合は、できるだけ家族間がまんべんなくコミュニケーションをとれるよう、保護者双方が積極的に働きかけるとよいでしょう。家庭に保護者が2人いて片方の保護者に負担が偏っている場合、もう1人の保護者は、相談に乗る、感謝を伝えるといったコミュニケーションをとることが大切です。
その2. 反抗期の子どもには「毅然とした態度」と「聞く姿勢」
子どもが反抗期にあっても、腫れ物に触るように接する必要はありません。保護者が気を使いすぎて弱気でいると、子どもは保護者を「頼りない」と感じ、また意見を押し付けるようなことをすると反発をされます。
自立の過程にある子どもは保護者が思う以上にいろいろなことを考えているもの。何か抱え込んでいるようであれば、まずは聞きだして共感してあげることが大切です。思春期の子どもは、保護者の意見を全面的に支持することは珍しいですが、絶対に間違っているとは思っていません。自分の考えに自信がないのです。だからこそ、しっかり共感してあげることで、健康な心を育ててあげることができます。
例えば、「学校に行きたくない」と言われたら保護者はびっくりして慌てて解決策を提示しようとしますが、まずはじっくり話を聞いてあげること。「そうなんだ、どうして?」と質問をすることで、少しずつもつれた糸がほどけ、子ども自身で解決の道を出していくものです。そのうえで危険が迫っていることが明らかになれば、具体策を出していくのが良いのではないでしょうか。
とはいえ、子どもにとって世界が広がるこの時期は悪い誘惑も増えます。子どもの身を守るために「〇〇(犯罪につながりそうなことなど)をすると、■■のことが起きるからこれだけはやめてね」というように、子どもが納得できるような具体的な説明を毅然とした態度で伝えましょう。
その3. こんなときどうする Q&A
Q. 子どもが中学生になってもベタベタと甘えてきます。自立してくれるのか心配です。
お子さんがベタベタと甘えてきたら、まずはしっかりと受け止めてください。不安が原因の場合が多いです。拒絶をすると余計に不安がり、自立の妨げになります。
受け止めて一緒にいてあげることで、やがて自立しベタベタは減っていきます。
Q. 子どもの反抗心が強く、コミュニケーションが取れません。
強く反抗する子に対しては無理に濃密なコミュニケーションを図る必要はありません。ただし、家の中にいるときはよく観察し、変わった様子がないかを確かめてください。そして「本当に困ったときはいつでも助けに行く覚悟あること」「仕事を休んででも何かあれば助けたい」というメッセージは繰り返し伝えてあげてください。保護者に大切に思われているという確信が、情緒の安定につながっていきます。
Q. 子どもが全然しゃべらず、コミュニケーションが成り立ちません。
無理にしゃべらせる必要はありませんが、一緒に映画を観に行くなど共通の行動をとるといいでしょう。お子さんの様子もよくわかりますし、「○○なところが面白かったね」など会話のきっかけができます。しゃべらない子というのは、ボキャブラリーが貧弱で自分の気持ちをうまく表現できない子が少なくありません。将来に向けてコミュニケーション能力をつけさせてあげるためにも、訓練の機会をあげると良いでしょう。
渡辺弥生教授
先生からのメッセージ
ご自身の経験を振り返ってもわかるとおり、思春期というのは誰にでも秘密があるもの。保護者が子どものすべてを理解することは難しいものです。また、今はSNSを使った交流など、私たちが子どもだったころとはコミュニケーションの手段が多様化しているので、友人関係の構築なども大きく変化しています。保護者は子どもの悩みに必ずしも「解答」を出せるわけではないので、子どもが自立していけるようにサポートしてあげることが大切です。コミュニケーションで重要なのは「量」ではありません。「質」を大切にして、子どもの話しに関心をもち、注意をむけてあげてください。そのうえで、気をつける必要があることは具体的に教えてあげましょう。
この記事を家族や友人に教える
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