2019.05.21 2023.10.08
子育ての悩みが軽くなる? やってみようアドラー心理学
編集担当
近年「アドラー心理学」をテーマにした本が次々とベストセラーになっていることをご存知ですか?
アドラー心理学を実践すると、悩みが軽くなり、勇気が湧いてくるといわれています。
アドラー心理学はどのようなものなのか、また、ご家庭での教育にどのように役立つのか、勇気づけ親子教育専門家の原田綾子さんに教えてもらいました。
その1. 家族は「縦の関係」ではなく信頼と尊敬に基づく「横の関係」
アドラー心理学では、親子のコミュニケーションは、信頼や尊敬、協力といった横の関係でつながっていると考えることからスタートします。
保護者がお子さんに命令をしたり干渉したりといった縦の関係で接していると、言うことを聞かないとイライラしたり、お子さんを心配するあまり、本人に物事を任せておけず、先回りして手助けしてしまったりします。すると、お子さんはいつまでも自分で考え行動する経験を積まないため自信が持てず、力を伸ばすことができません。
横の関係の繋がりというのは、年齢や役割が違ってもお互いに信頼と尊敬の念を持ち関わること。家族が横の関係で繋がると、お子さんが自信を持ち、生きていく力を身に付けられるようになります。
その2. 行動のエネルギーになる「勇気づけ」
アドラー心理学の勇気づけの子育てでは、特別に何かできたときだけではなく、できて当たり前のように思われることにこそ注目し、勇気づけます。
たとえば、毎日学校に行く、ご飯を食べる、勉強をする、など、すでにできていることを当たり前のこととしてスルーせず、「今日も頑張ったね!」「美味しそうにご飯食べてくれてありがとう」「勉強やっているんだね」など、いつもあなたのことを見ているよ、応援しているよ、味方だよ、と思える声かけや関わり方で子どもの勇気(困難を乗り越える力)を育てます。
失敗したときやうまくいかないときも勇気づけができます。
たとえば、テストの点が思うように取れなかったとき。まずはお子さんの気持ちに寄り添い、そして次に良い点を取るために今からできることを話し合います。
ポイントは保護者が一方的に「こうしなさい」と指示命令をするのではなく、お子さんの考えを聞き、保護者は自分の考えを提案し子どもを勇気づけながら最終的にはお子さんがどうするかを決めること。
結果だけでなく、「やろうとしている」姿勢や小さな変化にも注目し、絶えず子どもを勇気づけることも大切です。そうすることで子どものやる気と自信が引き出されます。
また、「ありがとう」「嬉しい」「助かる」などの言葉もどんどんかけていきましょう。
親も子も「不完全」を受け入れると楽になる
人間は不完全な存在です。アドラー心理学では、不完全を受け入れる勇気が大切だと考えます。保護者のみなさんもお子さんと一緒に「失敗・いっぱい・大歓迎」で成長していけばいいのです。
その3. アドラー心理学ではどう考える? 答えてみよう8つの質問
最後に、アドラー心理学における考え方の練習をしてみましょう。アドラー心理学を用いたとき、みなさんは次の8つのシーンにおいてどのような行動を選択しますか? ぜひ考えてみてください。子育てに正解がないように、質問の答えは一つではないかもしれません。正解することにこだわらなくても良いので、問いに対して「アドラー心理学式に考える」ことを実践してみてくださいね。
Q1. 子どもが新しいことに挑戦するとき、どうサポートする?
A. 見守る・子どもに任せる
B. 具体的にやり方を指示する
【解説】
アドラー心理学では親は子どもの力を信じ、見守ります。お子さんは自ら考えたやり方で物事をやり遂げると達成感を覚え、それが自信となり、もっといろんなことに挑戦してみたいという意欲につながるからです。お子さんに助けを求められたときは、勇気づけたり「お母さん/お父さんはこうを思うよ」などと提案すると良いですね。
Q2. リビングを散らかしている子どもにどうやって片付けてもらう?
A. ごほうびを用意する
B. なぜ片付けてほしいか伝える
【解説】
お子さんにやってほしいことがある時は、命令口調ではなく、お願い口調で依頼してみましょう。片付けてほしいときは「散らかっていると心が休まらないし、みんなが困るんだ」「みんなが使う場所だからきれいにしてほしいな」など、フラットな気持ちで伝えることで信頼関係が芽生えるようになります。
Q3. 子どもの話を聞いているときの行動で当てはまらないものは?
A. 相づちを打つ
B. 共感しながら聞く
C. 子どもが言いたいことを先に話す
D. 言葉をくり返す
【解説】
「正しい/正しくない」「良い/悪い」など、ジャッジせずにお子さんの言葉をそのまま受けとめて話を聞くことが大切です。聞き上手になるコツは「うん、それで?」などと相づちを打ちながら聞くこと。「それは辛かったね」などと共感しながら聞いたり、「そうなんだ、楽しかったんだね」と子どもの言葉を繰り返すのもいいですね。
Q4. 子どもが友人関係で悩んでいる様子。どう声をかける?
A. 子どもが話しはじめたら共感しながら聞く
B. 問題を聞き出して具体的な解決案を出す
【解説】
何があったのか詳しく知りたいという気持ちになるかもしれませんが、話したがらないお子さんから無理やり聞き出すのは得策ではありません。「なにかあったの?」と声をかけ、お子さんが話し始めたら共感しながら聞くようにします。また、話を聞き終えた後は、「どうしたらいいのか」をお子さんが主体となって一緒に考えるようにします。話したがらないときは「いつでも相談に乗るからね。話したくなったら言ってね」などとお子さんに寄り添う言葉をかけられるといいでしょう。
Q5. 夏休みのお出かけ先、どうやって決める?
A. 親がすべて決める
B. 家族全員で話し合って決める
【解説】
家族全員で話し合って決めることで、お子さんにも当事者意識が芽生え、自分のこととして積極的に物事に取り組めるようになります。夏休みのお出かけ先も、家族全員で話し合って決めた方がより楽しめるはず。子どもの頃から話し合いの経験をしていると、社会に出てからも自分の考えを持ち、意見を言ったり人の意見を聞いたりできるようになります。
Q6. テストの点がよくなかった子どもになんと声をかける?
A. 「次どうすればいいか考えよう」
B. 「○○さんちの△△ちゃんは100 点だったんだって!」
【解説】
アドラー心理学では、良くなかった点についてくどくどと話すのではなく、次に向けてどうすればよいのか話し合います。また、比較の対象は他人ではなく過去の自分。勇気づけの声かけを行うときも「前と比べて○○できるようになったね」など、個人の成長を重視すると良いですね。
Q7. うちの子、ちょっと消極的かも...「消極的」をポジティブな言葉に言い換えるなら?
A. 慎重
B. 落ち着いている
C. 冷静
【解説】
お子さんのよくない部分がどうしても目について心配になってしまうという保護者の方は、物事の見方を変化させる「リフレーミング」をしてみましょう。一見、ネガティブな意味を持つ言葉でも、ポジティブな面に光を当てて言い換えられないか考えます。例えば、「消極的な性格」という場合は、「慎重な性格」と言い換えられると、まったく印象が異なるはずです。
Q8. 自分が「なんだか疲れたな」と感じたらどうしますか?
A. 昼寝する
B. それでも頑張る
【解説】
つい感情的に子どもを叱ってしまったりイライラしてしまったりするときは体や心が疲れているサインかもしれません。そんなときは無理をせずゆっくり休息を取ったり、あまり細かいことは気にせずに「怒るときだってあるよね」「今は勇気づけの練習中」と考えたりして、自分で自分を勇気づけてあげてください。実は自分で自分を勇気づけることこそが、お子さんを勇気づけるもとになるからです。保護者の方自身の心のコップに勇気がないと、お子さんの心のコップにも勇気を注ぐことはできません。「毎日子育て頑張ってるね」「いつも家事お疲れ様」と、毎日頑張る自分を自分で勇気づけしましょう。
※この記事は、会報誌「メイコミュレター」を再編集して加筆したものです。
プロフィール
原田綾子(はらだ あやこ)さん
勇気づけ親子教育専門家。株式会社HeartySmile 代表。元小学校教諭。
アドラー心理学に基づいた「勇気づけ」をベースとした子育て講座、講演活動を行う。子どもへの関わりかただけではなく母親の心のありかたに焦点を当てた講座が好評。著書に『アドラー式「言葉かけ」練習帳』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。
この記事を家族や友人に教える
あわせて読みたい記事
-
落ち込まないで。お子さまのテストの点数が悪いときの適切な接し方
2023.10.10
テストの返却は、お子さまと同じように保護者もドキドキするものです。お子さまのテストの点数が期待していたよりも悪かったとき、保護者はどのように接するべきでしょうか。 もしかすると、お子さまに対...
-
原因がわかれば大丈夫!「勉強ができない子」のタイプ別対処法を解説
2023.10.23
お子さまの学校の成績がふるわないと、どうして勉強ができないのかと不安になってしまうものです。実際に、勉強がなかなかできないお子さまへの接し方に悩んでいる保護者の方は多いでしょう。 勉強ができ...
-
中学受験で親ができる8つのこと!成功する親に共通する条件とは?
2023.11.30
「中学受験は親の受験」といわれるほど、まだ幼いお子さまがチャレンジする中学受験では親の果たす役割が大きいといえます。それでは、中学受験で親ができることとは、どのようなサポートをいうのでしょう...
-
お子さんを不安にさせない。受験期を支える心の保ち方
2023.10.06
編集担当 まもなく受験シーズン本番。この時期、受験生の保護者はあれこれ悩むよりもどっしりと構えていることが大切なようです。その理由と保護者の心の保ち方について心理...
-
子育て心理学:学校に行きたくない? 子どもの変化に気づくポイント
2023.10.08
編集担当 昨日まで元気に学校へ行っていたはずなのに、今日はなんだか様子がおかしい......。お子さんのふとした変化が気になるときってありますよね。もしかしたら重...
-
子育て心理学:テストや試合で実力を発揮できる! 緊張のほぐし方
2023.10.08
みなさんのお子さんは、本番に強いタイプですか? それとも緊張してしまって、なかなか実力を出しきれないタイプでしょうか? 勉強や練習に一生懸命取り組んでいるお子さんには、ぜひ本番...
-
評価の点数や○(まる)の数だけじゃない 通知表をフル活用して子どものやる気を伸ばそう
2023.10.06
学期末に子どもが持ち帰ってくる通知表。教科の成績や日常生活の記録などがまとめて記載されていますが、○の数や評価の数字を確認するだけで終わってはいませんか。通知表は子どもの力を伸ばすためには欠...
-
心理学の専門家に聞く!きょうだいを比較しないで育てるには?
2023.10.09
「やってはいけない」と頭では分かっているけれど、ついきょうだいを比較してしまったり、一人だけに手をかけてしまったり......。こんな悩みをお持ちの保護者は少なくないのではないでしょう...
-
夏休みから実践!数学・算数嫌いをなくすお子さんとのコミュニケーション
2023.10.08
苦手意識を持つ子が多い数学・算数。MEIKO保護者のみなさんからも、数学・算数のつまづきに関するご相談が届いています。「お子さんに口うるさく言っても逆効果」、「自分が教えられない」など...
タグ一覧
- #保護者向け
- #高校受験
- #勉強法
- #大学受験
- #アンケート
- #中学受験
- #勉強効率
- #接し方
- #集中力
- #インタビュー
- #勉強計画
- #塾
- #教育改革
- #勉強時間
- #英語
- #日常生活
- #勉強環境
- #夏休み
- #数学
- #進路選択
- #体調管理
- #定期テスト
- #習慣化
- #食べもの
- #復習
- #費用
- #面接
- #学生生活
- #模試
- #部活
- #教室紹介
- #習い事
- #記憶力
- #進学
- #スマホ
- #モチベーション
- #偏差値
- #受験前
- #国語
- #推薦
- #算数
- #自由研究
- #褒め方
- #ルール
- #一般入試
- #内申点
- #叱り方
- #学校生活
- #料理
- #新学年
- #総合型入試
- #通知表
- #個別指導
- #小論文
- #理科
- #社会
- #自分らしさを仕事にする
- #計画
- #読書感想文
おすすめ記事
-
中学受験で重要な算数対策とは?算数嫌いにさせない学習方法
2023.10.05
中学受験の科目の中でも、算数は苦手意識を持つ受験生が多い科目といえるでしょう。 中学受験を成功させるためには、算数を苦手科目にせず、合格に向けて着実に実力をつけていくことが大切です。 現在の...
-
高校受験の塾選びのポイントを解説!失敗しないための注意点も紹介!
2023.10.20
高校受験に向けて、塾に通いたいと考える人や、受験生のお子さまを塾に通わせることを検討する保護者は多いでしょう。 しかし一口に塾といっても数が多いため、どこを選ぶか悩んでしまう人も少なくありま...
-
大学受験の費用はどのくらい?内訳や費用を抑えて合格するコツ
2023.10.05
【2021/12/28更新】大学受験のしくみは以前より複雑化しています。勉強をがんばる受験生本人だけでなく、保護者のサポートも重要になってきています。 最近では、現役合格を目指して複数の大学...
-
【中学生必見!】中間・期末テスト勉強の時間や計画の立て方、点数を上げる勉強法を紹介
2023.10.05
「テストに備えてちゃんと勉強しているのになかなか点数が上がらない」、「部活で忙しくて中間・期末テストの勉強時間が取れない」このような悩みを抱えていませんか? ...
-
授業中の腹ペコ対策! 子どもが自分で仕上げる『塾前ごはん』
2023.10.09
勉強や部活を頑張るお子さんたちは食欲旺盛。塾で帰りが遅くなる日には、夕方に軽食を摂らせてあげたいと考える保護者は多いのではないでしょうか。 今回は、...