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2019.06.26      2023.10.08

子育て心理学:学校に行きたくない? 子どもの変化に気づくポイント

編集担当

昨日まで元気に学校へ行っていたはずなのに、今日はなんだか様子がおかしい......。お子さんのふとした変化が気になるときってありますよね。もしかしたら重大なサインが隠されているのかもしれないと思ったとき、みなさんはどのような行動をとりますか?
お子さんの変化に気づき、適切な対応をするための方法を『感情の正体−発達心理学で気持ちをマネジメントする』の著者である法政大学心理学科の渡辺弥生にうかがいました。

その1. 変化のポイントを見逃さないで

その1. 変化のポイントを見逃さないで

新しい物事が始まったとき、あるいは環境が大きく変化したとき、人は強く不安を感じることがあります。進学や転校を経験したお子さんは、何か不安を感じているかもしれません。

お子さんに何か変わったことがないかと観察するとき、みなさんはどのような姿勢で見守っていますか? 「憂鬱そうにしているのは、もうすぐテストがあるからに違いない」など、先回りしてお子さんの気持ちを推し量っていないでしょうか。 もしもそのように先回りをしてから観察をしているのであれば、一旦その姿勢を変えてみてください。先に推測をした上で観察をしてしまうと、予測以上の物事に気づかず、サインを見逃してしまうかもしれません。

お子さんから発せられるサインはさまざまなパターンがありますが、とくに下記のようなケースは何か重大な問題を抱えていることがあります。

時間を守らなくなる

異常に早すぎる、必ず遅れる、長時間遅れる、などが続くときは何か心に負荷がかかっている状態なのかもしれません。昼夜逆転など、生活習慣にズレが生じている可能性もあります。時間を守るということは簡単なようでいて、ある程度の緊張感がなくてはできないこと。それができなくなっているということは、何か問題が生じている可能性があります。

片付けができなくなる

他人に迷惑がかかるほど身の回りが乱雑になっているときは注意が必要です。お子さんにはあまりないことだと思いますが、部屋がゴミ屋敷化するまで放置している場合はメンタルに変調をきたしていることが多いです。

顔色、声の調子が異なる

顔色や声には心の調子がよく現れます。お子さんを見ていて一番気がつきやすいポイントかもしれません。

その2. 「学校に行きたくない」と言われたら

その2. 「学校に行きたくない」と言われたら

保護者がお子さんの変化に気づくだけでなく、お子さん本人に「学校に行きたくない」と言われて何かが起きていることに気づくケースもあると思います。

突然「学校に行きたくない」と言われたら保護者のみなさんはびっくりしてしまうかもしれませんが、どうか落ち着いて対応してください。

まず観察してほしいのはその言い方です。
例え「学校に行きたくない」と言われても、それが本当に重大な意味を持っているかどうか、それだけではわかりません。
もしも食欲があってどこか楽しそうな様子がうかがえるのであれば、それほど心配することはないかもしれません。大人が「こんないい天気の日に会社に行きたくないな」と思う日があるのと同じようなことかもしれないからです。
一方で、顔色が悪い、何かを怖がる、あまり喋らなくなったなど、その他の気になる変化が見られる場合は、教師やスクールカウンセラーに相談するなどの対応が必要になるでしょう。

しかし、どんな対応をするにしてもまず保護者のみなさんにしてほしいのは、お子さんに共感することです。気持ちに寄り添ってあげることです。
「学校に行きたくない」と言う言葉に驚くあまり、「えっなんで!」「何かあったの?」と問いただしたり、「学校に行くことは将来大事なことなのよ」など価値観の押し付けは、お子さんへのプレッシャーになってしまいます。
その場で解決を求めて、お子さんを叱るようなことはしないでください。
むしろ、「なんか気が進まない日もあるよね」と、お子さんが学校に行きたくないという気持ちをまずは受け止めて、それから少しずつ理由を聞いてあげてほしいと思います。何を話しても叱られない、穏やかな時間を作ってあげると、お子さんは口を開いてくれるかもしれません。そして、話すことで気持ちの整理ができ、解決の糸口になることが多いです。

その3. 理想の生き方を押し付けない

その3. 理想の生き方を押し付けない

お子さんに「学校に行きたくない」と言われて保護者がびっくりしてしまうのは、心の奥底で「うちの子には元気に学校に通ってほしい」と強く願っているからではないでしょうか。保護者が思い描いたお子さんの人生設計があり、そこから外れてしまうことを恐れているという節はありませんか?
その結果、お子さんが学校に行かなくなったらどうしようと怖がりすぎて、大事に捉えてしまいがちなのかもしれません。

本来、人には広く多様な生き方があるはずです。
そのなかで、学校に通うことに対する重要度は人それぞれです。特に、子どもたちは成長とともに、対人関係も広がり、自分のことで悩んだり、他者のことが気になったり、勉強が急に難しくなったり、日々いろいろな壁にぶつかるのが自然です。
イライラしたり、うまくいかない不安が、つい「学校に行きたくない」という表現に込められることもあるのです。学校に行く/行かないということよりも、むしろ、どんな壁にぶつかっているのかいつでも聞くよ、という保護者の姿勢が、お子さんを安心させることでしょう。保護者が不安視しすぎると、お子さん自身も学校に行かないということを異常に重大なものとして捉えて事態が深刻化することもあるのです。
まずは保護者が余裕を持ってゆったりと構え、「じゃあ今日は休んで、元気を充電しよう」と言えることで、お子さんは胸の中の恐怖心を拭う手助けができることもあります。

情動というものは感染するものです。お子さんが学校に行かないということを保護者が必要以上に恐れてしまうと、その恐怖はお子さんに伝わり、相談ごとができなくなるなど負の側面が増大します。

例え問題があったとしても、保護者はドンと大きな気持ちで構えて、まずはお子さんの気持ちを受け止めてあげてください。そのときに、保護者の求める理想像などは押し付けず、「あなたの味方だから、一緒に考えていこう」という気持ちだけを伝えてあげてほしいと思います。
問題の解決はそこから始まっていくでしょう。

法政大学心理学科 渡辺弥生教授
法政大学心理学科
渡辺弥生教授

先生からのメッセージ

親子であろうと夫婦であろうと、人にはそれぞれ別々の人生があります。保護者からみると「それは失敗だろう」と思えることでも、お子さんはお子さん何りに、自分で体験して、そこからたくさんのことを学んでいくものです。
生き方についは自分の理想を押し付けず、こういうことも考えられるね、などそヒントになることを話し、努力を認めてあげたいものです。伸びしろを信じて、サポートできる関係を築けるといいですね。

<取材協力>

渡辺弥生(わたなべやよい)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。
同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。
同大学大学院ライフスキ
教育研究所所長兼務。教育学博士。
専門は、発達心理学、発達臨床心理学。

■著書
新刊『感情の正体ー発達心理学で気持ちをマネジメントする』を筑摩書房より刊行。

その他、
『11歳の身の上相談』(講談社)
『ソーシャル・スキル・トレーニング』(日本文化科学社)
『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)
『子どもの10歳の壁とは何か?乗り越えられる発達心理学』(光文社)
など。

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