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2017.12.01      2023.10.08

子育て心理学:打たれ強い子がもつ「レジリエンス」って?

失敗することを極度に恐れる、叱られるとなかなか立ち直ってくれない......。繊細なお子さんをもつ保護者のみなさんは「どうしたら元気になってくれるのだろう」と悩むことが少なくないようです。そこで最近注目されているのが「レジリエンス」。心の回復力のことです。
法政大学心理学科・渡辺弥生教授に、打たれ強い子がもつレジリエンスについて教えてもらいました。

子育て心理学:打たれ強い子がもつ「レジリエンス」って?

その1. 元気な自分のイメージを持つと、上を向きやすくなる

同じようなストレスを受ける事柄に遭遇しても、その後の対応は人によってさまざま。心の切り替えが、上手にできる人とできない人がいます。この差は レジリエンス(回復力) によるものだと考えられますが、その能力が何に由来するのかはまだ明らかになっていません。

しかし、目標を持った人はそうでない人に比べて気持ちの切り替えが早い、すなわち回復力が強い、ということは理解できると思います。「なりたい自分」をイメージし、それに近づく姿勢が回復のプロセスになるのです。アメリカの子どもは「ヒーローになりたい!」と具体的な人物像を思い描き、それをロールモデル(手本)にして成長します。傷つくことがあっても、明るく元気なヒーローを目指して、くじけずに立ち直っていくのです。

しかし、今の日本ではロールモデルを見つけることが難しくなっているように思います。まずは成功する体験を与えてあげるのが大切です。そのうえで、自分にできる目標を立てられるようになると、次から少し前を向きやすくなります。 目標を立てるときは周囲の大人がサポートしてあげるとよいでしょう。子どもはまだ客観的に自分の実力を測れず、適切な目標を立てることができない場合があります。そんなときは大人がその子の体力を見て、目の前の山が登れそうかどうかを一緒に考えてあげることです。「ちょっと頑張れば登れる」という成功経験を繰り返すことで、達成する喜びを知り、次第に自信が持てるようになり、打たれ強い子になっていきます。

その2. 毎日少しずつ「心の筋トレ」を!

まだよくわかっていないことの多いレジリエンスですが、その力は鍛えて育てることができます。心理学の世界では、レジリエンスを筋肉に例えたトレーニング方法が紹介されています。筋肉は日々鍛えていなければ簡単に落ちてしまい、いざというときに力を出そうとしても使うことができません。日々のちょっとした鍛錬が必要なのです。

毎日できる、とても簡単な「心の筋トレ」方法を紹介します。

レジリエンス、4つの筋トレ

マッスルを鍛えるために、毎日下の4つの項目について3つくらいずつ思い浮かべ、実際に声に出してみます。自分の良い面を考えましょう。

1. I am マッスル:私は◯◯◯ (◯◯◯に自分を肯定する単語を入れる)

例:私は親切、私は正直、私はおおらか、など

2. I can マッスル:私は◯◯◯ができる (◯◯◯に自分ができることを入れる)

例:私は挨拶ができる、私はきれいな字がかける、私は早起きができる、など

3. I like マッスル:私は◯◯◯が好き (◯◯◯に自分が好きだと思うことを入れる)

例:私はサッカーが好き、私は給食の時間が好き、私はドラマが好き、など

4. I have マッスル:私には◯◯◯がいる、私は◯◯◯を持っている (◯◯◯に自分の身近にいる人、自分の大事にしていることやものを入れる)

例:私には祖母がいる、私にはかわいい猫がいる、私には××ちゃんがいる、など

これはポジティブに物事を考えるためのトレーニングなので、それぞれの内容は難しいものにする必要はありません。「歯磨きができる」「挨拶ができる」といった、ほとんど当たり前だと思われていることで十分です。自分が当たり前だと思っていることも実は、素晴らしいことなのです。その良さを再認識することで、ポジティブな心を育てます。

その3. 保護者に注意(関心)を向けてもらうだけで救われる

お子さんの幸せを願うほど、保護者は「いつも元気でいてほしい」と思うものです。しかし、ご自身がお子さんの年齢だったころをよく思い出してみてください。朝からびっしり授業が詰まっていて、友人関係も複雑、部活やクラブ活動もあるとなれば、傷つくこと、元気をなくしてしまうようなことはたくさん起こります。いつも元気でいることはなかなか難しいのではないでしょうか。
誰にだって、少し気持ちを落ち着かせたいときはあります。無気力なときがあったとしても、毎日たくさん考えることがありすぎて少し疲れているだけなのかもしれません。

お子さんの成長を願うがゆえ、自立を促して突き放しすぎたり、問題の解決を急ぎすぎたりする保護者がときおりいらっしゃいますが、これはレジリエンスを育てるためにはよくないことでしょう。
お子さんとのコミュニケーションで大切なのはまず、 温かい眼差し(関心)注意を向けてあげること、話を聞いてあげること です。保護者がかけられたい言葉「お母さん(お父さん)頑張っていますね、疲れたでしょう」は、子どもが保護者からかけられたい言葉でもあります。保護者がちゃんと気にかけてくれていると確信できれば、お子さんにとっては大きな救いになります。

法政大学心理学科 渡辺弥生教授
法政大学心理学科
渡辺弥生教授

先生からのメッセージ

少し元気をなくしている子に対して、心配をしすぎる必要はないと思われます。しかしいつもとあまりに様子が異なるようであれば、声をかけて話を聞いてあげるといいでしょう。
そのためには日頃からお子さんがどんな表情・行動をしているのかよく見ておく必要があります。話を聞く際は解決を急がず、まずはゆっくり耳を傾けてあげてください。

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