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2016.12.14      2023.10.09

心理学の専門家に聞く!きょうだいを比較しないで育てるには?

「やってはいけない」と頭では分かっているけれど、ついきょうだいを比較してしまったり、一人だけに手をかけてしまったり......。こんな悩みをお持ちの保護者は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、それに対するアンサーの一つとして、法政大学心理学科・渡辺弥生教授にきょうだいを育てる際に気をつけたいポイントを聞いてきました。ぜひご覧ください。

心理学の専門家に聞く!きょうだいを比較しないで育てるには?

その1. 現代はきょうだいがライバルになりやすい

保護者は、きょうだいはいつも仲良く助け合って生きていってほしいと願うものですよね。でも、なかなかそうはいかないのが現実です。
1940年代前半の日本では、きょうだいは仲が良いことが多かったようです。家長である父親が一番偉く、親は子どもに厳しいのが当たり前。しかも子どもの数が多く、きょうだいが5、6人いることは珍しいことではありませんでした。親に甘やかされない子どもたちは、親と一定の距離を置いてお互いが助け合っていたので上の子は下の子を統一し、組織だっていたのです。

しかし、現代ではきょうだいの人数が少なく、それぞれの子どもと保護者との一対一の関係は深くなっています。子どもたちは保護者からまっすぐに愛情を受けることができる一方、きょうだいは保護者の愛情を奪い合うライバルになりやすく、昔のように親に対して子ども同士でスクラムを組む関係を築くことが難しくなりました。

そのような関係のなかで育つ子どもたちは互いに比較してコンプレックスを抱きやすい状況にあります。保護者に言われずとも自分自身で自分ときょうだいを比較してしまい、自信が過剰になったり自信を失ってしまったりすることがあるのです。そこでさらに保護者や周りの大人から比較されると、一層その傾向を深めてしまうことは想像に難くありません。

その2. 保護者が考える子どもの「性格」は正しくない!?

人間は難解な物事よりも分かりやすい物事に気をとられやすいものです。人間の内面とは外からは見えにくく、わかりづらいもの。そのため子どもに問題行動があれば、ついついその子自身の"性格"のせいにしがちです。しかし、これは、親が一生懸命やっても言う事を聞かないときに、無意識に親自身の責任にしたくないための責任転嫁から、子どもの性格のせいにしてしまっていると説明できます。

例えば保護者が2人のきょうだいを「気が強い性格の子」と「気が弱い性格の子」と判断していたとしても、それはサンプルが2つしかない場合でのきょうだいを比較しての結論です。「長男よりも気が強い」「近所の子よりも気が弱い」と言った安易な比較の上での性格です。100人の子どもたちと比較しているわけではないので、妥当な性格理論とはズレが生じています。しかも大事なことは、悪い性格のせいにすると子どもの内面に悪影響を与える可能性が出てきます。

保護者が考える子どもの「性格」は正しくない!?

その3. 他人よりも過去や未来の自分と比較する

しかし、保護者も人間。まったく比較をせずに育てるのは難しいものです。比較をゼロにすることを目指すのではなく、子どもが自分の中で先週の自分よりも今週は伸びるといった「個人内評価」ができる子に育ててあげましょう。他人と比較ばかりされる子は、外の世界へ出ても常に他人と比べて劣等感を抱くようになってしまいます。それではなかなか情緒が安定しません。

それよりも「今は○○○ができないけれど、これから頑張っていこうね」や「前は○○○ができなかったのに、できるようになってすごいね」と声をかけ、その子自身の過去と今、今と未来を比較してあげるといいでしょう。
どんな風に育ってほしいのか大きな目標をたて、それに向けて褒めたり叱ったりしてあげることが大切です。

法政大学心理学科 渡辺弥生教授
法政大学心理学科
渡辺弥生教授

先生からのメッセージ

一口にきょうだいといっても、組み合わせは千差万別です。性別や年齢の差、人数、構成などあまりにも複数のパターンが存在するため、きょうだいがいることが人格にどのように影響するのかは科学的にはまだよくわかっていません。
同じ親から生まれ、同じ環境で育ったきょうだいになぜ個性が出たり、好みが違うのかも明確にはわかっていないことが多いのですが、親の関わりを含めた環境の影響が強いことははっきりしています。保護者のみなさんは、子どもの人格を決めつけたりせず、子どもの良いところを認めて、見守ってあげてほしいなと思います。

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